ボーズは「CES 2016」の期間中、米国ラスベガスのダウンタウンにおいて同社が自動車メーカーにOEMする、車載オーディオの新たなプロダクトラインを発表した。会場にはコンセプトの異なったデモカー4台を置き、ボーズが目指す次世代のサウンドをいち早く試聴できた。
◆次世代サウンドシステムとして3つのプロダクトラインを発表
ボーズがこれまで提供してきた『ボーズ・プレミアムサウンドシステム』の基本的スタンスは、「車両の開発初期段階からOEM先と共同で開発し、車種ごとに専用設計とする」こと。これまで培って来た経験を活かし、車種ごとに最適なサウンドシステムを提供してきたのだ。今回の発表はそのコンセプトをさらに発展させ、搭載車のセグメントや音響技術の組み合わせにより新たに3つのプロダクト・ラインを追加することとした。
追加されたプロダクト・ラインは、最上位の『Bose Advanced Technology Series(ボーズ・アドバンスト・テクノロジーシリーズ) 』を筆頭に、コンパクトカー向けの『Bose Small Vehicle Series(ボーズ・スモールビークル・シリーズ)』、パフォーマンスカーに相応しい『Bose Performance Series(ボーズ・パフォーマンス・シリーズ)』の3つ。加えて従来からの『Bose Premium Sound System(ボーズ・プレミアムサウンドシステム)』を搭載するマツダ『ロードスター』も試聴車として用意されていた。
会場はイベント等も開催できる天井が高いスタジオ的な雰囲気。その中に4台のデモカーがコンセプトごとにゆったりと置かれていた。デモカーはすべてシルバーメッキに身をまとい、一台一台がスペシャルな雰囲気いっぱい。こうした中で試聴会は行われた。
圧巻だったのは、ボーズ・アドバンスト・テクノロジーシリーズとして展示されたキャデラック『CT6』に搭載の『Bose Panaray System(ボーズ・パナレイ・システム)』だ。車内には全34個のスピーカーを配置し、ベースボックスをフロント左右の足元に埋め込み、そのエンクロージャーの働きにより圧倒的にパワフルで深みのある低音再生を実現するというもの。音の広がりも見事で、スピーカーの位置をまったく意識させることがない。とくにセンタースピーカーは、家庭用Bluetoothスピーカーにも使われる音響技術を駆使することで、限りあるサイズでもしっかりとした音作りができていた。そのリアルさは和太鼓が揺れる様子まで音で感じ取れるほど。ついCT6のオーナーとなった人が羨ましく思えてしまった。
◆日本のコンパクトカーにも最適な『ボーズ・スモールビークル・シリーズ』
続いて、予想以上に好印象だったのが、日産『ジューク』に搭載されていた『ボーズ・スモールビークル・シリーズ』だ。システムは、フロント左右のドアスピーカーとAピラーのツィーター、ヘッドレスト内蔵スピーカーを組み合わせたシンプルなもの。しかし、ドアスピーカーはストロークをたっぷり取った新開発スピーカーなんだそうで、これが想像以上に量感たっぷりの低音を聴かせてくれた。
メリハリのある中高域で、ボーカルもキレイに前方に定位している。ヘッドレストにスピーカーが組み込まれているわけで、ともすれば音像がその付近に引っ張られる可能性もあったのだが、それもない。絶妙なバランス設計により、音の輪郭を明確にしながら安定した定位感を実現できていたと言っていい。ボーズによればこのシステムであればコンパクトカーに相応しいコスト内に収まるという。搭載車が日本国内でも発売されることも最も期待したシステムだった。
また、安全運転支援(ADAS)にも通じるユニークな取り組みとして紹介されたのが、ハンズフリーや音声ガイドのコントロールシステムだ。通常、音声ガイドやハンズフリー通話の際はドライバーに最も近いスピーカーから音を出すが、その場合、その位置が遠いために聴きにくく感じることも少なくない。このシステムでは、ドライバーが最も聴きやすいポイントに音声の中心を自在に設定できる。そのため、楽しんでいる音楽を完全にミュートしなくても音声を聞き漏らすことがない。体験時は音声が頭付近で聞こえるように設定してみたが、この効果は抜群!ストレートに音声を聞き取ることができたのだ。
実は、ボーズがCES会期中にラスベガスでこのようなイベントを実施するのは初めてのこと。35年にわたり車両メーカーへOEMすることで培って来た技術は、クルマの電動化や自動運転が取り沙汰される次の世代の音作りにきちんと継承されている。そんなことを実感できた試聴会だった。