バンコクモーターショー16のスズキブースでは、ステージ裏手に隠れるように置かれていたモデルが気になった。『R150S BLACK HAWK』というのが車名らしく、どうやら発売予定の新型車のようだ。しかし説明はいっさいない。
これは一体なんなのか。スズキのスタッフに尋ねても、明確な答えは得られなかった。しかしすぐ隣に『RAIDER150R』が置かれていたことで、ある程度の推理をすることはできた。RAIDER150Rと R150Sはシルエットこそ大きく異なるが、よく見ればフレームも含め、車体を構成するほとんどの部品が共通なのだ。
つまり実質的には、RAIDER150Rのボディを着せ替えた派生モデルだと想像できる。R150Sの燃料タンクのように見える部分に給油口はなく、ダミータンクだということも、こうした想像を後押しする。そして重要なのは、タンク両脇のシュラウドがウレタンの塊を削り出したものだということと、タンクに貼られたステッカーが継ぎ接ぎされたものだったということだ。
こうしたディテールは商品と呼べるクオリティにはほど遠く、これはデザイン検討用のモックアップなのではないかという確信に近い思いが沸き上がった。おそらくスズキではRAIDER150Rの派生モデルの市場投入を検討していて、観衆の反応を窺うためにプロトタイプを持ち込んだ、といストーリーなのではないだろうか。
タイでは数年前から、どの2輪メーカーも市場の中心となっているアンダーボーンフレーム車から、より利幅の大きいスポーツモデルを積極的にアピールする方向へと急速にシフトしつつある。
そのなかでRAIDER150Rはアンダーボーンフレームの面影を残したスポーツモデルとして売られているが、スズキもこのクラスに純粋なスポーツモデルを投入したいと考えているのだろう。もっとも、スズキはインドですでに『GIXXER』という150ccスポーツモデルを販売中。これをタイ市場に合わせてデザイン変更するという手もあると思うのだが。