今年3月に開催された次世代スバル説明会ではプラットフォームを中心に「高性能を超え、感性に響く動的質感」と語られ、7月の『インプレッサ』お披露目(ひろめ)会でも「感動レベルの動的質感」と表現された次期インプレッサのプロトタイプ車に試乗した。
新型車について自信満々に語るのは、スバルに限らず自動車メーカーの常だから、前述のような物言いも、ああそんなものか、という程度に受け流していた。
でも、伊豆サイクルスポーツセンターのコースで実際にプロトタイプ車を走らせたら、そのデキの良さにびっくりした。プラットフォームを新しくすることで、こんなに良いクルマができるのかと思わせるような仕上がりだったからだ。
走りしてすぐに感じるのは直進安定性の良さだ。ハンドルに余分な力を加えることなく、軽く手を添えているだけでクルマが素直に真っすぐに進んでいく。ハンドルに力を加えれば瞬時にすっと、かつ滑らかに反応して向きを変えていく。この動き出しの感覚が自然で良いのだ。
乗り心地も良い。サイクルスポーツセンターの路面は、自転車が走るために段差などはないように作られていて、しかも小石すら落ちていない。路面が良いので乗り心地も良くて当たり前といった部分がなきにしてもあらずだが、どっしりとした安定感があって不快な振動や騒音がなく、乗り心地も快適なのだ。
不快な振動や騒音がないのはボディの基本骨格がしっかりしているからで、乗り心地の良さはサスペンションのスプリングやダンパーやスタビライザーなどの総合的な成果だが、いずれにしてもこれらの要素が新型インプレッサのデキの良さを強く感じさせた。
試乗車は2種類あってタイヤが17インチと18インチで異なり、18インチ仕様車にはトルクベクタリングも備えられていた。タイヤのほかに足回りのチューニングも異なるため、走りのフィールに大きな違いがあり、18インチ仕様が格段に良かった。
タイヤやボディを大きくすることには反対だが、これだけの違いがあると、新型インプレッサでは18インチタイヤの装着車をお勧めにせざるを得ない。
試乗したのはいずれも2.0リットルエンジン搭載車で、エンジンそのものはキャリーオーバーである。いろいろな改良が加えられ、わずかながらパワーアップが図られると同時に燃費が向上した。アクセルワークに対するレスポンスが良くなったのもポイントで、これも好感できる要素である。
問題はスバル独自のCVT「リニアトロニック」トランスミッションで、これにもいろいろな改良が加えられたとはいえ、いまだにリニアリティに欠ける印象がある。そろそろ別のトランスミッションを考える時期に来ているのではないか。
もうひとつ、デザインについても躍動感と塊感など、いろいろと語られているが、見るからにスバル車で旧型車からの進化の幅が小さいように思われた。
価格については明らかにされていないが、1.6リットルエンジンを搭載したベースグレードは歩行者エアバッグを標準装備しながら200万円を切る水準に抑えられるという。期待して良さそうだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。