このところ、加速してデザインが滑らかになっているボルボである。昭和な私の時代では、ヨーカンの箱(失礼)にタイヤがついているような、とにかく広い荷物室を大前提として、1ミリでも大きくスペースをとるべくやっきになっていたように思う。
けれど、ここへきてDピラー(要するにリアウィンドウ)はどんどんナナメになってきて、食い気より色気状態。デザイン優先で荷物室を狭くすることには、ボルボ社内でも相当な喧々諤々があったようだが、最終判断は、やはり団子より花なのである。
しかし、夏のバカンスが数週間もある欧米人と違い、日本の生活パターンや移動距離を考えると、この流れは大いに歓迎したい。ゴルフバッグが入らないという意見は、宅配便に任せて、美しいデザインを堪能する贅沢を味わいたいものだ。
横幅が広く、背がぐっと抑えられ、するりと長いV90のプロポーションは独特の雰囲気を醸し出している。そしてドアを開けると、目の前に広がる木目のインテリア。木目というと落ち着いた重厚感を感じることが多いものの、今回はやたら新鮮でアクティブ。木目に沿うのではなく、敢えて歯を直角に入れることで現れた木の断面つかったデザインが、わくわくさせてくれるのである。
スポーティでハードな「R-デザイン」に対し、こちらの「インスクリプション」は、ゆったりとした乗り心地。けれど、黒で統一して木目のインテリアのよさが失われてしまうR-デザインより、車内の居心地感がだんぜんいい。
大柄なワゴンは、品よく気持ちよく乗りたいものである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。