◆アルファなのに、ハイブリッドってありなの?
今回のワンポイント確認は、「官能的な音が魅力のアルファなのに、ハイブリッド(以下HV)ってありなの?」である。
環境問題は考えなければいけない。だけど、それと文化は別の話だと思っている。クルマはたしかに移動に使うものだけれど、同時に文化も担っている。一律に「燃費をよくしろ」というのは、パスタは細いスパゲティ、なんならカッペリーニ(スパゲティよりほっそいやつ)だけにしろ、ゆで時間のかかるペンネは税金を課せと言っているようなものではないか。
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けれど、抗いきれずにアルファロメオもHVである。ちょっと待って。信号待ちの時間でさえあの咆哮に包まれて幸せな気分になれるというのに、アイドリングストップって、HVってどういうことよ。
ミドルサイズのSUVとして日本にやってきた『トナーレ』に搭載されているのは、マイルドハイブリッド。モーターが、がっつりサポートするのではなく、ちょいとお手伝いしますよというものだ。ゆえに燃費が劇的に向上するわけではなくカタログ数値で16.7km/リットル。先に報告すると、今回は高速道路と信号のほとんどない郊外の道を中心に、ゆるやかに500kmほど走って燃費は、15.7km/リットルである。
◆ぼんやりハンドルを握っている隙はない
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モーターの役割は、発進時や加速時に力を上乗せしてパワフルに速度を上げられる。もちろんモーターゆえに滑らか……であるはずなのだが、トナーレはちょっと様子が違う。恐るおそるの超低速で発進すると、めちゃくちゃスムーズというわけではないのだ。人間臭い機械的なところが残っていて、いいぞ、これでこそアルファロメオと逆ににんまりしてしまう。
ただ、私も多少の学習能力を持ち合わせており、その後は私の右足が勝手にトナーレのモーター出力特性に合わせてアクセルを踏んでいる。最初のいい意味での野生っぽさは感じられなくなったことは残念なような、うれしいような複雑な気分である。
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信号待ちではエンジンが止まり、うっとりするほど官能的な待ち時間ではなくなったのは事実だが、その間、運転席まわりを見わたすと、アルファロメオらしいアナログ的な美意識がふんだんに味わえる。エンジンが始動すると1.5リットル+ターボが奏でる重低音のエンジン音が響くのだが、びっくりするように音が響きはじめるわけでも、車体をゆらす振動もないのが好印象だ。
トナーレはSUVゆえに室内も荷室も十分に広い。背は1600mmあるものの、ハンドリングは見事なまでにクイックで、車高を感じさせない。いや逆に、ハンドルをきった感覚以上に鼻先がぐいぐい方向を変えていくので、なんだこれは的な俊敏さなのである。SUVでありながら、かなりのスポーティさ。ぼんやりハンドルを握っている隙はない。
◆結論。
「官能的な音が魅力のアルファなのに、ハイブリッド(以下HV)ってありなの?」は、アルファロメオの五感に訴えるクルマ作りは、音だけではなく体全体で感じさせるもの。HVであっても十分に色気があるトナーレは好奇心をあおってくるSUVだった。
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■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「ハチ公物語」「しっぽをなくしたイルカ」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。最新刊は「法律がわかる!桃太郎こども裁判」(すべて講談社)。