アウトモビリ・ランボルギーニはV型12気筒と3基のモーターを組み合わせた同社初のハイブリッドHPEV(ハイパフォーマンスEV)の『レヴエルト』を日本でも発表。そこでデザイン責任者のミィティア・ボルケルトさんにこのレヴエルトの特徴などについて話を聞いた。
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◆重要なのはシルエット
---:ランボルギーニ初のHPEVであるレヴエルトをデザインするにあたり、チャレンジだったことや、苦労したことなどがあれば教えてください。
アウトモビリ・ランボルギーニヘッドオブデザインのミィティア・ボルケルトさん(以下敬称略):まずサンタアガタボロネーゼの本社で仲間とともに新たなランボルギーニのデザインをするということ自体が既にチャレンジです。同時に本当に楽しいことでもあります。ランボルギーニをデザインするときは、いつも笑みをたたえてデザインをしたいと心がけています。
実は今回のプロジェクトはスタートした当初から、とにかくゼロからデザインしようと決まっていました。クルマとしてはプロポーションが大事なのですが、それもゼロからのスタートです。そしてそのプロポーションを最大限に活かしながら、どう空力や機能をデザインに織り込んでいくかを考えていったのです。我々がデザインする時に常に大切にしているのはランボルギーニらしい個性的なDNAを取り込むことです。今回も特にシルエットでそれが表現されているでしょう。
例えばレヴエルトのグリーンハウスの形状や、フロントからサイドウィンドウに続くシルエットによって遠くから見てもランボルギーニだと、そしてレヴエルトだと分かっていただけるデザインに仕上がっていると自負しています。
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また今回初めてハイブリッドのV型12気筒エンジンを搭載していますので、やはりエンジンを見せたいという気持ちも強かったのですね。そこで、私は個人的にバイクに乗るのが好きなので、バイクみたいにエンジンをオープンにして見せようと考え、そのアイディアを取り入れています。
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このクルマで最もチャレンジしたことは、デザインとエアロダイナミクスが、一番完璧な形で両立できるかをエキスパートと詰めていったところでしょう。どのサーフェスの部分でも両方のパフォーマンスを出していかないといけません。最高速度350km/hを出すわけですから、その中でなるべく空気抵抗を減らしてエアロダイナミクスを最大化すると同時に、デザインも活かしていかなければならない。その完璧なバランスがいつも大きなチャレンジになっていきます。例えば、V型12気筒が“自然に呼吸”できるためには、大きな開口部を持つエアインテークが必要ですよね。それをどうやってデザインと、エアロダイナミクスとを両立させるか。そういったことが一番大きなチャレンジだったといってもいいでしょう。
このレヴエルトは、ランボルギーニの未来の扉を開くという役割を担っていますので、新しい世代のデザインも意識しています。お客様からもマーケットからも非常に高い評価をいただいており、とても嬉しく思っています。
◆ランボルギーニだ、レヴエルトだとわからせること
---:レヴエルトのプロポーション、そしてランボルギーニのDNAがどのようにスタイリング面で活かされているかをもう少し詳しく教えてください。
ミーティア:まずランボルギーニのDNAのお話をしましょう。私はカーデザイナーとして仕事ができること自体、とても嬉しいく思っています。そしてさらにランボルギーニで仕事ができることは、言葉では表すことができないくらいすごいことです。まさに夢が叶ったという思いです。
私がランボルギーニに入社した最初の日、デザインセンターに向かう途中にミュージアムを通るのですが、そこにはランボルギーニのこれまでのクルマが展示されているのです。そこでその素晴らしいシルエットを見ることができました。ですからランボルギーニに入社した初日から、ランボルギーニらしいDNAを間近に触れることができ、理解を深めることができたのはとても良い経験でした。
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スーパースポーツカーセグメントにおいても、ランボルギーニは特別な存在だと思います。そこで私がいつも心がけていることは、実際にこのレヴエルトもそうなのですが、見てすぐにランボルギーニだとわかることが大事なのです。例えば100台のスーパースポーツカーがずらっと並んでいても、その中ですぐにこれがランボルギーニだとわかることが大事なんです。シルエットを重要視しているのはそういうことなのです。
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もう一つ大事なこと。デザインだけでいいますとランボルギーニだとわかることももちろん重要ですが、それと同時にランボルギーニのどのモデルか、つまりこのクルマであればレヴエルトだというところまでわかってほしいのです。このクルマであればフロント部分のYシェイプのライトがすごく特徴的ですね。ですから、東京の街を夜に走っていて、後ろから来ると、このYシェイプのライトが見えただけでレヴエルトが来たなと分かるでしょうし、リアの六角形のエグソーストパイプを見れば、やはりレヴエルトだとわかってもらえるでしょう。
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インテリアも同じです。様々なディテール、例えばセンターコンソールのところもYシェイプになっているんですが、そういったどのディテールをとってもランボルギーニ、そしてレヴエルトだとわかってもらえるようにこだわってデザインをしています。
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全体をスペースシップを意識してデザインしていますので、このYシェイプはエイリアンからインスピレーションを得ているのです。
◆未来に向かうのがランボルギーニ
---:その“スペースシップデザイン”とはどういうものでしょう。
ミーティア:ランボルギーニのデザインをスケッチする際には、シルエットがとても大切だとお話をしましたね。このシルエットはもちろん『クンタッチ』(発表当時日本では「カウンタック」と呼ばれた)から始まったもので、このランボルギーニのデザインDNAを受け継いでシルエットを作っています。このシルエットがスペースシップみたいなシルエットで、リアがチョップオフ、切断されて、まるでモーターサイクルみたいなイメージがあるでしょう。そしてフロントもやはりスペースシップ、宇宙船みたいな形をしていますよね。
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これはランボルギーニのマジックだと思うのですが、、このデザイン要素は必ず入れようとしています。そのうえでYシェイプのフロントヘッドライトや、ボディサイドもデザインフィロソフィーを受け継ぎながら、少し長めのYシェイプを入れてリアフェンダーまですっと流れるようにしています。エグゾーストパイプも少し盛り上がったような形で高さを持たせ、六角形にするなどで、レヴエルトの特別な特徴を盛り込んでいるのです。そうすることで、一目でこれはランボルギーニだ、そしてレヴエルトだとわかるのです。
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---:つまりスペースシップデザインといっているのは、クンタッチ以降のランボルギーニから受け継いだものという解釈ですね。
ミーティア:はい、どのランボルギーニを見ても、宇宙船が舞い降りたような驚きがあるでしょう。普通のクルマの中に突然宇宙船がこの地に降り立ったと感じますよね。これこそがランボルギーニらしさであり、他とは違って目立ったり、エキセントリックだったり、そういったことを全部ひっくるめてスペースシップらしいという言葉になっているのです。
---:未来的なとか、そういったニュアンスも含まれていると。
ミーティア:ランボルギーニは必ず未来を見据えていかなければならないんです。これもランボルギーニのDNAだと思います。例えばランボルギーニのミラーは小さいですが、フロントウインドウは大きいでしょう。これは、前を見据えている、未来を見据えていくということなのですよ(笑)。
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---:では、このレヴエルトにおいて、新たにトライしたことは何でしょうか。
ミーティア:3Dの効果をこのクルマでは特に狙いました。クンタッチ、『ディアブロ』、『ムルシエラゴ』といったクルマは、1つの面が際立っていたかもしれません。もちろんレヴエルトも1つ1つの面を強調してはいるのですが、よく見るとフロントは2つのラインから始まってモノコックを包み込んでいったり(エンブレム下から左右のYシェイプを通りサイドへ抜けていくライン)、エンジンが見えたりなど、小さな驚きがたくさん隠されています。このように、全体のインパクトだけではなく、もっとこのクルマのことをよく知りたいと思ってもらえるような仕掛けをたくさん作っているのです。
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◆何かに掻き立てられてカーデザイナーに
---:ここからはクルマから離れて、ミーティアさんのことを教えてください。なぜカーデザイナーになったのですか。
ミーティア:私はもともと共産主義の東ドイツの出身で、ワクワクするようなクルマは周りにはありませんでした。でも、7から8歳くらいの子供の頃からモーターサイクルや、飛行機やヘリコプター、クルマのスケッチを始めたんです。その頃から私はデザイナーになりたいと思っていましたので、その後、1986年、12歳の頃に、父のガレージから彼のクルマを押し出して、試行錯誤したデザインをもとに、こんなクルマがあったらいいんじゃないかと、実際にモデルを作ったりしていました。
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その後、東と西の対立が終わったことで、大学に行ってデザインを学ぶことができ、クルマのデザイナーになりたいという夢を続けることができたのです。卒業後、ポルシェに入社して17年間デザイナーを経験し、その後ランボルギーニに入ったのです。クルマのデザイナーになりたいという子供のころからの夢がかなって、いまやランボルギーニで働いているんですよ。それはもうとてもハッピーですし、満足しています。今後もより大きな貢献がランボルギーニに出来るのではないかと思っています。
---:子供の頃からクルマが好きだったのですか。
ミーティア:私の家族にデザイナーがいたわけでもなかったのですが、スケッチで表現するのが好きでしたし、クルマやモーターサイクルは大好きでした。そしてクルマのことをもっともっと理解したいと思っていましたし、未来のクルマはどういうものなのだろうということを常に頭に描きながら、色々なスケッチを描いていました。
デザイナーなどクリエイティブな仕事に就く人たちは、潜在的にならなければいけないという衝動に掻き立てられているんですよ。私もその一人なんです。つまり、なぜなったのかではなく、何かに掻き立てられてなったということなのかなと思いますね。
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