アストンマーティンジャパンは、スーパーラグジュアリーSUVのアストンマーティン『DBX』に追加された「DBX707」の試乗会を、富士スピードウェイにて一部ジャーナリストに向けて開催した。その走りたるやSUVを忘れさせるものだった。
◆ふつうのSUVとは違う
アストンマーティンアジアリージョナルプレジデントのグレゴリー・アダムス氏によると、DBXは、「普通のSUVとはちょっと違う」という。その理由はいくつもあるが、DBX専用に開発したプラットフォームをまず挙げる。それにより、「他のアストンマーティンらしいパフォーマンススポーツカーのような走りを4ドア5シーターSUVで実現した」という。
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それをベースにDBX707はトランスミッションを9速湿式クラッチATに変更することで、「変速レスポンスを30%向上」。また、DBXよりも157PS、200Nmも上回る、707PSの最高出力と900Nmの最大トルクを受け止められるようになった。また、ドライブモードも「GTスポーツ」と、「スポーツプラス」に加え、「レース」モードも設定された。
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ブレーキに関してもカーボンセラミックブレーキを採用するとともに、フロント420mm、リア390mmと大径化し、6ピストンキャリパーを採用。4輪合計でバネ下重量を40.5kgも削減している。同時に油圧系のサイズやブースターチューンも見直し、ブレーキフィールとレスポンスを向上させた。また、メインクーリングインテークとアンダーフロアからフレッシュエアを取り込んで、ブレーキの冷却性能も引き上げている。
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◆2.7トンでも音を上げないブレーキ
そういった改良はサーキットを走らせてみればすぐに納得できるものだった。まず何より驚いたのが灼熱のサーキット、外気温は35度を突破していたので、路面温度はその温度を大きく上回る状況で、さらに、車重2.7トンもの重量を受け止めるDBX707のブレーキは一度も音を上げるどころか、ブレーキペダルのタッチも全く変わらず、良好なフィールを保ち続けていた。
そのフィールはピットレーンを出て第1コーナーに入る際は僅かにオーバーサーボ気味に感じたが、それはまだ冷えている状態だったから。その後きちんと温度を上げさえすれば、思い通りの減速力を手に入れられた。そのストッピングパワーも充分以上で安心して200km/h以上から思い切りブレーキペダルを踏みつけることが可能だ。
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いい忘れたが、今回のサーキット走行は通常のDBXを駆るレーシングドライバーの先導のもとで行われ、1スティントあたり3ラップ程度、それを休憩を挟みながら3スティント行うものだった。ただし、レーシングドライバーも結構なペースで走らせている(とはいっても彼らの実力からすれば6割程度だろうか)ので、クルマにも慣れていないこちらとしては結構真剣に走らせる羽目になる。
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そういった状況であるから、違和感のあるフィーリングやタッチなどがあると、非常に気になるもの。しかしこのDBX707に限っていえばそういったことは全くない。先ほどのブレーキフィールはもとより、ステアリングも狙った通りのラインを修正舵なく楽しめるし、ダンロップコーナーからの最終コーナーまでの登りだけでなく、第1コーナーからの下りでもそのボディの安定性は見事なもので、車高の高いSUVを走らせていることなどすぐに忘れ去ってしまった。
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コーナーでは荷重をフロントに残しながらステアするのだが、その姿勢変化の素直さとハンドリングの追従性は見事としかいいようがない。DBX707用に見直された新しいサスペンションセッティングやステアリング系のセッティング変更により、ボディコントロールが非常にうまくいっていることの証左に思えた。
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実はまだこのクルマで一般道を走らせたことはない。ただ、DBXの経験でいえば、街中であってもステアリングが正確なこともあり、ボディサイズが一回り以上小さく感じ、すり抜けも気にならない程だったので、そこに加えてこれだけのパワーが備われば鬼に金棒。アクセルレスポンスもピーキーに感じることなくしつけられているので、乗りやすいことこの上ないことだろう。また、乗り心地も、サーキットでゼブラゾーンに乗り上げてみても(この時はレーシングドライバーがあえて乗り上げた)、全く不快な突き上げが感じられなかったので、街中でも決して不快さはないと思われる。
唯一の不満はこのパワーを街中では解き放つことができないことだ。このパワーを余裕しろとして楽しめるかどうか、それはドライバーの良識にかかっている。
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