国産プレミアム・カーオーディオ・ブランド『BEWITH』(ビーウィズ)のフラッグシップスピーカー、“Confidence”(コンフィデンス)にスポットを当てている。
“Confidence”に注がれている技術や思想をみることで、スピーカー、そしてカーオーディオの奥深さを浮き彫りにしようと試みている。今回は、現在の“Confidence”に至る進化の過程を追いながら、カーオーディオの難しさについて、さらに深く踏み込んで解説していく。
前回は、カーオーディオにおいて理想の音を出そうするときに立ちはだかる“矛盾”について解説し、『BEWITH』がそれをどのように乗り越えてきたのかご紹介した。その中で、「カーオーディオのスピーカーユニットは、製品の状態ではまだ“半完成品”である」ことについても触れたのだが、今回はその部分についてさらに踏み込んでいく。
マニュアル化が難しいデッドニングという作業
ところで、“デッドニング”という言葉を聞いたことがあるだろうか。クルマのドア内部の状況を、オーディオ的に整えようとする作業を指す言葉である。
しかし“デッドニング”は、相当に奥が深い。主に、ドア内部の鉄板の共振を防ぐことと、スピーカーの裏側から発生される背圧エネルギーを処理することがポイントとなるのだが、それらについてさまざまな考え方がある。また、使用するスピーカーユニットの特性や組み合わせるパワーアンプの特性、さらには車種によるドア内部形状の違い等々、条件がその時々で異なる。マニュアル化は不可能だ。結果、インストール次第で、仕上がりの音に違いが出る、という次第なのだ。
それに対して『BEWITH』は、“SIEG”(ジーク)という販売特約店専用の車室内音響特性測定装置と、それを核とした独自の音質保証プログラムを用意した。
そして実は『BEWITH』は、もう1つ別のアプローチも実践してきた。それは、「エンクロージャーを伴った取り付け方法を推奨する」、というアプローチだ。ホームオーディオのスピーカーがそうであるように、スピーカーユニットを箱(エンクロージャー)に収める取り付け方法がベター、という考え方を示したのである。
なぜそれがベターなのかというと…。
「スピーカーをコントロール下におけるから」である。ドア内部の環境をコントロールしようとするよりも、スピーカーユニットそのものをコントロール下に置いた方が合理的、という発想なのである。
BEWITHが“あえて”13cmにこだわる理由
“Confidence”のミッドウーファーは13cm口径だ。それに対し、一般的なミッドウーファーは16~17cm。口径が大きくなると、低音再生には有利だが、エンクロージャー化しようとすると容量の大きな箱が必要となる。16~17cmのスピーカーに対してエンクロージャーを用意しようとしても、ドア内部で完結できるサイズにすることは難しい。しかし13cmならそれが可能となることが多い。
なので“Confidence”は、16~17cmと同程度の低域再生を実現しつつもドア内部でエンクロージャーを完結できるサイズの13cm口径にこだわってきたのである。
さらに低域をより再現させるため、エンクロージャーについては“バスレフ”方式を取ることで対応した。“バスレフ”とは、スピーカーの裏側から発せされる背圧を利用して、それを“ポート”と呼ばれる穴から表側に出す仕組みだ。こうすることで、低域の再現性を上げようとするのである。
しかし、エンクロージャー化を行うことでのデメリットもある。それは、クルマの内張りを大幅に加工しなければならないことだ。なので、加工に抵抗を感じるユーザに対してはエンクロージャー化を推奨できなかった。
ところが…。最新の“Confidence”は、必ずしも“エンクロージャー”に収めることを前提としていない。『BEWITH』はエンクロージャー化以外でもスピーカーユニットの性能を100%引き出そうとする方法の開発も行っている。
高級車に見合う高級オーディオとして認められたBEWITH
その回答の1つが、2013年の秋に示された。以下のニュースの中で、それは実現されていた。そのニュースとは、「イタリア・パガーニ社製の高級スポーツカー『ウアイラ』(Huayra)の日本仕様車のためのオプショナルオーディオシステムを、『BEWITH』がパガーニ・ジャパンから受注する」、というニュースである。
パガーニとは、ランボルギーニに在籍していたデザイナーのオラチオ・パガーニ氏によって設立されたスーパーカーメーカーだ。そして『ウアイラ』とは同社が2011年に発表した、最新モデルである(スーパーカー『ゾンダ』の後継として発表されたモデル。日本での販売価格は1億5000万円から)。
『BEWITH』は、『ウアイラ』の車体構造に合わせて専用設計した正規オプショナルオーディオシステム、『BEWITH Prime Ensemble for Huayra(ビーウィズ プライム アンサンブル for ウアイラ)』を用意した。『メルセデス・ベンツ SLR マクラーレン ロードスター 722S』のために開発したシステムをベースに、それをさらに進化させたものである。このシステムは、世界最高峰のスーパースポーツカーにふさわしい、シンプルかつハイグレードなものであり、かつ、取り付けによって車両の価値を損なわないような細心の配慮もなされている。スピーカーにおいては、純正位置に換装できるような仕様となっていて、さらにはシステム全体での軽量化にも貢献できるように、エンクロージャー化もされていない。
ちなみに、『BEWITH Prime Ensemble for Huayra』に組み込まれているスピーカーは、『Confidence ll Sunrise Trio』。“Confidence”史上、最高のモデルである、“Confidence ll Sunrise”シリーズ(発表は2011年の秋)によって構成される3ウェイシステムだ。
新開発の音響専用マグネシウム合金「MAGNEOLA(マグネオラ)」という存在
この“Confidence ll Sunrise”は、“Confidence”の思想をそのまま受け継いだ製品であり、その上で、細部がさらに煮詰められ、究極的に理想に近づけられた製品である。そして『BEWITH Prime Ensemble for Huayra』では、新開発の音響専用マグネシウム合金「MAGNEOLA(マグネオラ)」が、スピーカーのバッフル部(取り付け面のパーツ)に採用されている。これが、エンクロージャー化に変わる、1つの回答なのである。
「MAGNEOLA(マグネオラ)」とは、『BEWITH』が2012年に発表したパワーアンプ、“Accurate A-110S ll”にて初採用された素材だ。『BEWITH』は、車載用の音響機器に使う素材として理想的なマグネシウムを、世界で初めて量産モデルに採用していたのである。マグネシウムは実用金属中、最軽量である(アルミの1/2-2/3、鉄の1/4以下の比重)。そしてこれがなぜに「車載用の音響機器に使う素材として理想的」なのかというと、理由は振動吸収性能の高さにある。その振動吸収性能は理論値上、アルミの250倍以上。それをスピーカーの取り付け部分である“バッフル”に使うことで、ドア内部の大がかりな改造をせずとも、“Confidence ll Sunrise”をコントロールできるようにした。この『BEWITH Prime Ensemble for Huayra』登場のニュースは、“Confidence”が次のステージに進んだことを、我々に強く印象付けた。
さて。『BEWITH』の“Confidence”は、その独自性から、特殊なスピーカーと見られることもあるが、コンセプトはただただシンプル。音の三要素である「高低」「大小」「音色」を、色づけなく音源のまま再生することだけが目指されているスピーカーだ。原理・原則に基づいて設計されているに過ぎないのである。
そして『BEWITH』は、取り付け、およびサウンドチューニングの管理にまで踏み込み、そのスピーカーの性能を100%引き出すことにも取り組んできたのである。スピーカー開発における“矛盾”と、カーオーディオならではの“矛盾”に、さまざまな角度から取り組み、1つ1つ解決させてきた。
“Confidence”は、これからもさらなる進化を遂げるはずである。“Confidence”が今後どのように発展していくのか、その動向にも、大いに注目していよう。