音を良くするには、優れたコンポーネント(機材)の搭載するだけでなく、クルマという環境を考慮した取り付けのテクニック。その必然性はなんとなく理解できても、具体的にどう改善するかは想像に硬いかもしれない。
ワザのひとつとしてドアのデッド二ングがある。
通常、ドアは樹脂系のドア内張とインナーパネル(鉄板部)で構成され、インナーパネルは、ウインドー・メンテナス用のサービスホールが多数空いており、そのままではユニット裏から出る音とユニット前面から出る音がドア内部で相殺され、スピーカー本来の音が十分に発揮されないだけでなく、さまざまな共振や定在波という、ややこしい問題を抱えている。このようなドア内の音響問題を改善するため、デッド二ングと広散処理が必須になってくる。
デッド二ング素材、レアルシルトは積水化学工業が開発。自動車用の制振材でルーツはカルムーンシート(建築用)として広く使われていたものだという。構造は金属層(表面はアルミ)に制振樹脂と粘着剤を組み合わせたもので、不要な振動を抑えると同時にエネルギー吸収力に優れ、かつ適度に柔らかいので施工しやすい。
一方、ディフュージョンは、広散・反射・吸収のために開発された素材で、レアルシルトと同じく積水化学工業が開発。世界初の硬質発泡体「ゼットロン」を採用。このゼットロンはラグビーボール状の独立気泡が厚さの方向に整列しているところが特徴で、圧縮に強くかつ柔軟に曲げることができる。ドア内部、スピーカーユニットの背圧、アウターパネル(鉄板面)に貼り付ける。雨水を吸い込まない素材なので安心して使えるところも嬉しい。
音響用に設計されたレアルシルト、ディフュージョンの素材を適材適所に使うことで、ワンランクアップの音作りが実現する。できる所からはじめてほしい。