「ヨーロッパのデザインや感性をブレンドした、Hi-Fi系アメリカンブランド」である“CDTオーディオ”。この度同社から、ハイグレードスピーカー『ESシリーズ』の生誕15周年アニーバーサリーモデル、『ES-1200iS』と『ES-6AS』が発表された。
この機会に、これらニューモデルの魅力と実力を検証しながら、同時に、“CDTオーディオ”のすべてに迫ろうとする週刊特集をお贈りしている。これまでは、創業者であるケネス・パーソン氏のスペシャル・インタビューと、コンポーネントスピーカーのベーシックモデル『HD-6Mo Pro』のインプレッション・リポートをお届けした。
それに引き続き今回は、同じくコンポーネントスピーカーのミドルグレードモデル『HD-62』と、ハイグレード機『ES-62i』の試聴記をお伝えしていく。
価格差以上のアップグレード感。フレームは素材、デザインとも別物。
早速、『HD-62』についてのインプレッション・リポートに入りたい。最初に当機の主要スペックからご紹介していく。
- ☆『HD-62』(税抜価格:9万円)
- ●仕様:16.5cm2wayコンポーネントスピーカー ●最大入力:180W(@100Hzハイパス) ●周波数特性:60Hz~20kHz ●能率:92.6dB ●取付穴直径:149mm(ウーファー部)●取付深さ:69mm(ウーファー部)
しかしながら実機をよくよく見ると、価格差以上に見た目の印象が異なっている。ミッドウーファーの振動板は、『HD-6Mo Pro』が、「ファブリック混合カーボンファイバーで強化したペーパーコーン」で、当機が、「カーボン処理ペーパーコーン」。色味はともにブラックながらも、表面の質感はガラリと違う。
フレームの素材もベーシック機が樹脂製だったのに対して、当機はアルミフレーム。マグネットの大きさはほぼ同じくらいだが、フレームは材質、デザインともに別物だ。なお、ターミナル部がファストン式からプッシュ式に変わっていて、そこから受ける印象の違いも手伝って、全体的なアップグレード感はなかなかに大きい。
なお、トゥイーターにおいては、ミッドウーファーほどの違いはなさそうだ。どちらもシルクドームであり、デザイン、サイズともに、かなり類似している。
さて、気になるのはサウンド面での違いなのだが…。
サウンド・クオリティの上昇度合いは、価格差以上…。
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試聴環境は、先週にお伝えした『HD-6Mo Pro』のテスト時とまったく同様だ。リファレンスパワーアンプとしては、“RSオーディオ”の『RS A 20』(税抜価格:23万円)を使用した。
最初の出音で、違いをはっきりと感じ取ることができた。当機から聴こえてくるサウンドのほうが、1音1音の輪郭がシャープだ。ベーシック機のフォーカスが甘かった、ということではない。質感的に引き締まった、という変わり方であったのだ。
よくよく耳をすまして細部を確認すると、サウンドの方向性は同様であることを感じ取れた。余韻や響きに独特の美しさがあり、倍音も良く乗っている。音に充実感があり、そして耳あたりが心地良い。そういった部分は、両機に共通している。そうでありながらも当機のサウンドは、よりHi-Fi度が高まり、解像度が上がり、結果、サウンドにシャープさがもたらされている。
ある意味、『HD-6Mo Pro』のほうが“CDTオーディオ”らしさは強かったようにも思えた。『HD-62』のサウンドがより原音に近づいたことにより、結果、個性が薄味になった、ということではないだろうか。
結論を言おう。『HD-62』は、よりコストパフォーマンスが高まっている。価格差以上の満足度が味わえたのだ。音色の好みで『HD-6Mo Pro』を敢えて選ぶ方もいるだろうが、総合力を比べると、価格以上の上昇度がある。もう1ランク、価格帯が上でも良いのでは…、と思えるほどだったのだ。そうしないあたりは、“CDTオーディオ”がユーザーフレンドリーなブランドだから、なのかもしれない。2モデルを聴き終わり、“CDTオーディオ”に対する好感度は、確実に高まった。
引き続いて、フラッグシップ機である、『ES-62i』のインプレッション・リポートへと進んでいく。なお、当機の税抜価格は11万円。ここも2万円という小幅な上昇に抑えられているのだが、音の違いはどうなのか…。
Hi-Fi度がさらに高められている。正統的に性能がアップしていることを実感。
はじめに、『ES-62i』の主要スペックからご紹介する。
- ☆『ES-62i』(税抜価格:11万円)
- ●仕様:16.5cm2wayコンポーネントスピーカー ●最大入力:200W(@100Hzハイパス) ●周波数特性:60Hz~20kHz ●能率:92.4dB ●取付穴直径:147mm(ウーファー部) ●取付深さ:69mm(ウーファー部
なお、トゥイーターは、若干サイズが大きくなって、当機では26mm。シルクドームタイプであることは同様だ。
かくして、そのサウンドは…。
またしても一段とHi-Fi度が高まっていた。何より、解像度の上昇を感じ取れた。音のきめ細やかさが確実に上がっている。特に高域がスムーズだ。質感も良好で、エレガントな響きが楽しめる。低域の質も向上した。エネルギー感が増している。
音色の方向性としては、温かみや、余韻や響きの美しさ等々、“CDTオーディオ”らしさはしっかりと感じさせてくれている。しかしそうでありながらも、さらに正統的なHi-Fi方向へとシフトしている。性能が上がっていることは間違いない。
結果、らしさはさらに弱まった、と言えなくもない。余分な味付けがないので、そのように感じるのだろう。コストパフォーマンスは、さらに高まっている。
上級機になればなるほど、お得感が高まるのだから、“CDTオーディオ”は、つくづく良心的なブランドである。ツウ受けしていることを、至極すんなりと納得できた。
さて、次回はいよいよ、『ESシリーズ』の生誕15周年アニーバーサリーモデルである、『ES-1200iS』と『ES-6AS』のインプレッションリポートをお届けする。公開は、4月第一週の金曜日を予定している。しばしお待ちいただきたい。