メインユニットの内蔵アンプでスピーカーを鳴らしていたところから、サウンドをグッと進化させようと思うなら、“外部パワーアンプ”の力を借りたい。余裕を持ってスピーカーを駆動できるようになるので、音楽の心地良さが向上する。結果、ドライブがもっと楽しくなる。
問題は、何を選ぶか、だ。
その参考にしていただこうと、注目のエントリーモデル6機種をピックアップし、それぞれの特長を試聴して探ってきた。そのリポートの2回目をお届けする。
最初に、試聴環境をおさらいしておきたい。試聴は、今回テストしたパワーアンプ6機種の正規輸入代理店である、イース・コーポレーションの試聴室で行った。試聴システムは、PC→USB DAC→パワーアンプ→スピーカー、という構成で、リファレンススピーカーとして使用したのは、「グラウンドゼロ」の『GZUC 650SQX』(税抜価格:6万5000円)。テスト機のフロントchのみを使用し、クロスオーバーは『GZUC 650SQX』に付属しているパッシブクロスオーバーネットワークで行っている。ケーブル類は「モンスターカーオーディオ」の精鋭で統一した。
リーズナブルに、外部パワーアンプならではの楽しさと「ロックフォード」らしさを満喫できる。
それでは、インプレッション・リポートを進めていこう。3台目としてテストしたのは、下記のモデルだ。
- ●Entry No.3
- ROCKFORD FOSGATE・R300X4 (税抜価格4万3000円)
- ●仕様:Class-A/B 4ch(4/3/2ch)パワーアンプ
- ●定格出力:50W×4(4Ω)、75W×4(2Ω)、150W×2(4Ωブリッジ) ●周波数特性:20Hz-20kHz(±1dB) ●S/N比:80dB ●入力感度:ローレベル(RCA)150mV-4V、ハイレベル450mV-12V ●クロスオーバー:ハイパス50Hz-250Hz(-12dB/oct)、ローパス50Hz-250Hz(-12dB/oct) ●サイズ(幅×奥行×高さ):335×172×51mm ●質量:2.90kg ●ハイレベルインプット装備 ●推奨ヒューズ容量:50A ☆2ch/4ch入力切替スイッチ装備 ☆PUNCH EQ(0/+3/+6dB)装備
同シリーズ中唯一の4chパワーアンプである当機も、発売以来、ロングセラーを続けている。押しも押されもせぬ人気モデルだ。
ルックスは比較的にシンプルだ。しかしながらトップパネル中央にはブランドロゴが輝き、存在感は高い。
スペックを見ると、定格出力をはじめ基本的な項目は概ねスタンダードな数値だ。ただし、機能面ではちょっとした特長がある。注目すべきは「2ch/4ch入力切替スイッチ」と「PUNCH EQ(0/+3/+6dB)」。
前者は、2chを入力するだけで4ch出力も可能になる、というものである。接続するメインユニットのライン出力が2ch分しかない場合、それを4chアンプに繋げようとするときには、分岐ケーブルを用意する必要があるのだが、当機ではそれが必要ないのだ。
後者の「PUNCH EQ」とは、「ロックフォード」伝統の“ブースト”機能だ。独特のアプローチで、サウンドに“パンチ力”を与えてくれる機能であるのだが、それをエントリー機でも楽しめるのはうれしい限りだ。
さて、音のほうはどうだったのかというと。
一聴して感じたことは、“低域の心地良さ”だ。どっしり感があり厚みもある。そして反応も速く、快活にリズムを刻んでいく。このあたりはさすがは「ロックフォード」といったところだろう。コンセプトに偽りはない。十二分に「ロックフォード」らしさを楽しめる。
高域の切れ味の鋭さにも“らしさ”が感じられた。輪郭がくっきりとしていて、各楽器の音の分離も正確だ。そして、低域、高域だけが強調されているわけではなく、中域にも充実感がみなぎっている。帯域バランスは至って自然だ。全体的な解像度とS/N感にも不満はない。
コストパフォーマンスの高さを疑う余地はない。この価格でありながら、外部パワーアンプをプラスした楽しさと、「ロックフォード」ならではの魅力を存分に味わえるのだがら。人気になっていることもうなづけた。
「ロックフォード」ブランドに憧れるエントリーユーザーの期待に、十二分に応え得るモデルに仕上げられているこの『R300X4』。ドライブをノリノリで楽しみたいと思ったら、当機を候補に入れることをお忘れなく。これをスルーしてしまったら、後々後悔することになりかねない。
今回の試聴テストは価格の安い順から聴いている。そんな中、このアンプで音が鳴った途端に違和感を感じた。違和感というと語弊があるが“今までの2台と違うぞ”という事。急に奥行きの表現力が増していて音数も大幅に増え、艶も感じさせるのだ。これで43000円? 凄い時代になったもんだ。しっかりとした低域は滲まず膨張せず無駄な余韻の無く締まっていて、素直に鳴りきる高域と全帯域そつなくクリアに再生する。とても好印象なパワーアンプだ。(藤澤純一)
音の質感が高く、クセもない。正統派なHi-Fiサウンドを聴かせてくれる。
続いてテストしたのも、実力アメリカンブランドの人気モデルだ。名称と基本スペックは以下のとおりだ。
- ●Entry No.4
- JL AUDIO・JX400/4D(税抜価格:5万4000円)
- ●仕様:Class-D 4ch(4/3/2ch)パワーアンプ
- ●定格出力:70W×4(4Ω)、100W×4(2Ω)、200W×2(4Ωブリッジ) ●周波数特性:20Hz-20kHz(±1dB) ●S/N比:93dB ●入力感度:ローレベル(RCA)200mV-4V、ハイレベル2V-10V ●クロスオーバー:ハイパス50Hz-200Hz(-12dB/oct)、ローパス50Hz-200Hz(-12dB/oct) ●サイズ(幅×奥行×高さ)230×195×53mm ●質量:2.18kg●ハイレベルインプット装備 ●推奨ヒューズ容量:40A ☆2ch/4ch入力切替スイッチ装備 ☆プリアウト(パススルー出力端子)装備
なお、当機は今回テストした6機種中、唯一のDクラスモデルである。それだけに、サイズは群を抜いてコンパクト。“超小型”ではないが、通常モデルと比べたらかなり小さい。
機能面にも見るべき特長が備えられている。ポイントは2点。1点目は「2ch/4ch入力切替スイッチ」が装備されていること。『R300X4』と同様に、2ch入力するだけで4ch出力させることも可能となっているのだ。そして2点目は、「パススルー出力端子」。サブウーファー用に他のパワーアンプを使う場合、入力した信号を当機の中ではスルーしてプリ出力することも可能なのだ。フロント+リア+サブウーファーというシステムを組む場合、合理的にワイヤリングできるのだ。
さて、当機の音はどうだったのだろうか。
テストトラックを流し始めて最初に感じたのは、“質感の高さ”だった。3万円台のモデル、4万円台のモデルと比べて、素養が上昇していることを感じ取れた。これまで聴いてきた3台の音をそれぞれ不満に思うことはなかったが、それらと比べて1枚上手であることを、すんなりと理解できたのだ。
Dクラス駆動であることによるビハインドも微塵も感じさせなかった。もはや「Dクラス=音質性能に不利」という傾向は消え去ったのかもしれない。少なくとも当機は、A/B級アンプと同じ土俵で闘えている。
さらには、クセがないことも当機の特長だろう。温かみはあるが、余分な色づけはない。高域は滑らかでスムーズ、中域にもハリがあり、低域にもエネルギー感がある。正統派なHi-Fiサウンド、というイメージだ。幅広い層に支持されそうな、ニュートラルなサウンドが楽しめた。
使いやすく、かつ素直なサウンドのエントリーパワーアンプをお探しで、かつ小型モデルが良いとなれば、『JX400/4D』は筆頭候補になり得る。お薦め度はなかなかに高い。
今回唯一のD級アンプ。D級=高域が伸びないというのも昔の話。力を抜いてサラリと綺麗に鳴らしてくれる。どの帯域がどうだこうだという特徴は正直無いのだが、心地よさを感じるトーンバランスで、空間表現力もなかなかなもの。音のエッジもしっかりと立っていながら刺さる部分は感じられないのは音数が多い証拠であろう。裏側で鳴っている細かい音もしっかりと再生されているのがとても好印象。このクォリティーのアンプであればワンランク上のスピーカーに対しても十分な再生力があるパワーアンプだ。(藤澤純一)
さて次週は5万円台後半の注目モデル2機を取り上げる。お手軽なパワーアンプをお探しならば、次週の記事も要チェック。