クルマの中で良い音を楽しみたいと思ったときのもっともスタンダードな作戦、「スピーカー交換」について広く解説している。第7回目となる今回は、「3ウェイ」をテーマにお贈りする。さて、これにはどんな利点があるのか、そしてどう実行すればいいのだろうか…。
■「3ウェイ」という選択肢があることを、この機会に覚えておくベシ!
ところで、「3ウェイ」は実のところハードルが高い。なので、初めての「スピーカー交換」でいきなりこれが実行されるケースは少ない。しかし、「3ウェイ」という選択肢があることを知っておくことには意義がある。このような、より良い音を手にするための“ノビシロ”があることを、この機会にぜひとも頭に入れておいていただきたい。
さて、まずは「3ウェイ」とは何なのかを明らかにしていく。「3ウェイ」とは、「ツイーターとミッドウーファーとで構成されるスピーカーレイアウトに、“スコーカー(ミッドレンジスピーカー)”を足すというシステム」である。
“スコーカー”とは、中域の再生を受け持つスピーカーユニットだ。これが、どこからどこまでの帯域を担当するのかは製品によりさまざまだが、イメージ的には「ボーカル帯域を担当する」と思っていいだろう。
続いては、「3ウェイ」のメリットを解説していこう。最初に「フルレンジ」スピーカーに対する「2ウェイ」のメリットからおさらいしておきたい。1つのスピーカーだけで低音から高音までをスムーズに鳴らし切れれば実はそれがもっとも理想的な再生方法となるのだが、実際はそうもいかない。音域が広過ぎるので、低域から高域までを1つのスピーカーユニットだけでクリアに鳴らし切るのは難しいからだ。しかし「2ウェイ」ならば、高域再生の専門家であるツイーターと中低域を再生するスペシャリストであるミッドウーファーとに役割分担をさせられる。結果、全帯域をよりスムーズに再生できるようになるのだが…。
■「2ウェイ」には限界がある!?
とは言いつつも「2ウェイ」のミッドウーファーには実は、多くの負担が掛かっている。ミッドウーファーが担当する帯域は、少なく見積もっても全帯域の6割以上。場合によっては8割近くを担当することもざらにあるのだ。
しかしミッドウーファーは実は、中域の高い方の音の再生はあまり得意ではない。振動板が波打つような動き(分割共振)をしてしまいがちなのだ。担当範囲が広いがゆえに無理が掛かっている、というわけなのだ。
さらに、ミッドウーファーはリスナーから見たとき角度が大きく開いている。なので、多かれ少なかれスピーカーから発せられる情報量が減衰しがちとなる。
でも「3ウェイ」化すると、これら弊害に対処可能となる。中域再生のスペシャリストである“スコーカー”が効率的にボーカル帯域を再生してくれて、さらには“スコーカー”を高い位置に取り付けることもできるので音像が上がりやすい。加えて、リスナーに正対させることも可能となるので、中域の情報を効率的にリスナーに届けられる。何より、ミッドウーファーの負担も軽減させられる。
ただし、デメリットもある。デメリットは主には2つある。1つは、「コストがかさむこと」だ。ユニット代が掛かることに加えて、取り付け費用もかさむ。スコーカーを取り付けるスペースを確保する必要があるからだ。そしてデメリットの2つ目は、「コントロールの難易度が上がること」だ。スピーカーユニットが増える分、状況は複雑化する。結果、サウンドチューニングがより難しくなる、というわけなのだ。
■手軽に「3ウェイ」を実行できる、注目製品を一挙に紹介!
というわけで「3ウェイ」にはメリットが多々ありながらもハードルが高い手法であるのだが、比較的に手軽にこれを実行可能な製品もある。
例えば、“グラウンドゼロ”のスコーカー、『GZUF 60SQX』ならば左右セットで、税抜価格:3万1000円で手に入る。また、“カロッツェリア”の上級グレード『PRSシリーズ』に属するスコーカー『TS-S062PRS』も、左右セットで税抜価格:4万5000円だ。
ただし、これらを既存のスピーカーシステムに加えようとするときには、“クロスオーバー”(音楽信号を帯域分割する装置)が必要となる。しかしながらこれらには専用の“パッシブクロスオーバーネットワーク”の設定がないので、“DSP”も合わせて導入する必要が出てくる。なのでやはり簡単ではないのだが、しかしパワーアンプを内蔵したリーズナブルな“DSP”もあるので、それを使えばまだ負担は少ない。この際それも同時に導入して、一気にシステムを本格化させるというのはアリだ。
また、“クロスオーバー”もセットされたリーズナブルな「3ウェイスピーカー」もあるので、初めての「スピーカー交換」でそれをチョイスしても面白い。具体的には、“フラックス”の『FS360』(税抜価格:7万円)や、“ビーウィズ”の『Reference AM Trio』(税抜価格:14万8000円)等ならば、比較的に手頃だ。
あるいはアメリカンブランドの“MTXオーディオ”の『イメージプロ・シリーズ』ならば、スコーカーとツイーターが専用ハウジングを用いて一体化されているので、インストールの手間も相当に省ける。最廉価なモデルである『IP463』なら、税抜価格:5万5000円でゲット可能だ。手軽に「3ウェイ」を楽しみたいと思ったら、当機は有効な選択肢となり得る。興味があればチェックしてみよう。
さて、初めての「スピーカー交換」について解説してきた当特集は、以上をもって終了とさせていただく。クルマの中でもっと良い音で音楽を楽しみたいと思っているのなら、当特集を参考に、「スピーカー交換」にぜひともトライを♪