思えば子どもの頃から「姿勢を正しくしなさい、背筋を伸ばしなさい」と言われて育ってきたが、まさか運転においてもそれが重要な鍵を握っているとは思わなかった。
新型『マツダ3』は、骨盤をしっかり立てて座り、背筋にS字カーブができるように開発したシートがベースとなっている。そして、人間が本来誰でも持っていて無意識に使っている「バランス保持能力」を発揮させることで、まるで自分の足で歩いているような自然な運転感覚が得られるよう、全ての部品を一新して開発したのだという。
シートのものすごいフィット感は初めての感覚
クローズドコースでの試乗は、まず2.0Lガソリンエンジンとなる「SKYACTIV-G 2.0」を搭載したセダンから。少しの隙間もなく、背中全面にシートバックがくっついてくる、シートのものすごいフィット感は確かに初めての感覚だ。低速で走りながら左右へステアリングを切ってみると、すでに手足の延長にクルマがつながっているような意識が芽生え、いつも通り普通に運転しているつもりが、とても丁寧に運転しているような挙動となっていることに気づく。
そこから高速域に踏み込んでみても、どこまでもなめらかな加速フィールが続く。心躍るような盛り上がりには欠けるものの、このクラスでこれ以上の上質感を持つクルマはないと思えるほど。低中速域ではやや路面の段差を拾う硬さが見られた足まわりも、高速域に入るにつれてエレガントさが増していった。
ボディタイプでも走りの印象は変わる
一方、1.8Lのクリーンディーゼルエンジンとなる「SKYACTIV-D」を搭載したファストバックに乗り換えると、低速域から足まわりのしなやかさが際立ち、1500rpmあたりからとてもイキイキと弾けるように吹け上がっていくエモーショナルな加速フィール。タイトコーナーが続くような場面でも、セダンより少しリアが大きめに振られるような印象だが、それが不快ではなく楽しい。いつの間にか夢中で走らせてしまうような面白さを演出していると感じた。
ただ開発者に聞いたところ、この印象の違いはパワートレーンの違いによるものだけではなく、ボディタイプの違いによるところが大きいという。もしSKYACTIV-G 2.0を搭載したファストバック、SKYACTIV-Dを搭載したセダンだったら、またインプレッションは変わるのかもしれない。
家族のドライブがもっと快適に
最後に後席にも座ってみると、セダン、ファストバックとも静粛性の高さに感心。ファストバックはやや頭まわりのスペースがタイトだが、シートの座り心地は快適で、どちらもファミリーユースとして十分に満足できそうだ。なにより、知らず知らずのうちに運転が丁寧になるマツダ3なら、家族のドライブがもっと快適になるのは間違いない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト
映画声優、自動車雑誌『ティーポ(Tipo)』編集者を経て、カーライフ・ジャーナリストとして独立。 現在は雑誌・ウェブサイト・ラジオ・トークショーなどに出演・寄稿する他、セーフティ&エコドライブのインストラクターも務める。04年・05年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本カー・オブ・ザ・イヤー(2005-2012等)選考委員、AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。