熟成が進んだ最終モデルの魅力
2019年の東京モーターショー開催と時をおなじくして、ドイツではフォルクスワーゲンが新型『ゴルフ』を発表した。来年の日本発売が待たれるところだけれど、クルマの場合、出たばかりよりも熟成が進んだ最終モデルも魅力的なのも事実。
そんなタイミングで、日本では10月1日からゴルフのディーゼルエンジン「TDI」が販売開始された。
すらりとしたシャープな雰囲気をまといながら、どことなく人懐こくてほっとさせるゴルフのデザイン。インテリアも同じで居心地のよさに包まれるゴルフならではの安心感である。そこに積まれた、ディーゼル+ターボエンジンはどんなパフォーマンスをしてくれるのか?
期待が高すぎた…?
しかしながら実際の走り出し感は、私の期待とはちょっと違った。ディーゼル=トルクが太くて走り出しからぐぐっと力強い。そんな期待で胸をふくらませていたのだけれど、アクセルペダルを踏んだ直後の走り出しが物足りないのだ。
カタログ値を見ると、最大トルクは1750回転から。右足がアクセルペダルに触れた直後のかなり低回転から発揮されているはずなのだけれど、ううむ、これは私の期待値が高すぎるのか。
切り替えられる走行モードには、燃費重視のエコモードがあるのだが、試しにエコモードに入れてみると、さらにゆるやかな加速感になった。これはさらに物足りない、いや、ここまでいくと「エコしています!」と潔さがあるので逆にこれはこれで受け入れやすい。
「Sモード」にこそゴルフの本領
ならばと、シフトレバーを手前に倒し、Sモードで走ってみた。すると。これこれ! このスタートダッシュ。アクセルペダルを踏んだ瞬間から、ぐっと加速していく気持ちよさ。ディーゼルのトルク感も十分に感じられて頼もしいったらありゃしない。
こんなことならSモードをデフォルトにして、エンジンスタートと同時に入るようにしたらもっとゴルフのよさ、ディーゼルエンジンの頼もしさを実感できるのに。残念極まりない。
私なら、エンジンスタートと同時にSモードに入れちゃうかな。その軽快な走りを支える熟成されまくりなボディ剛性のよさとサスペンションのしなやかさのマッチングは絶妙なんだもの。市場の声に鍛えられた最終モデルは、やはり価値ありだと思います。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。