カーオーディオに関心を持ちながらも実践に踏み込むのを躊躇しているドライバーは少なくない。その理由の1つとなるのが、「取付工賃」への不安だ。当特集は、その不安をクリアにすることを目指してお贈りしている。今回は「アウター化」について解説していく。
なお当特集は毎回、全国の有名カーオーディオ・プロショップに取材して記事を制作している。当回では千葉県千葉市の実力店、“サウンドクオリティー”に講師役を依頼した。今回もたくさんの情報を得られた。じっくりとお読みいただきたい。
ハードルは高いが、実行する価値は多大!
最初にビギナーに向けて、“アウター化”とは何なのかを説明しておきたい。“アウター化”とは、ドアスピーカーの取り付け面を内張りパネル面まで立ち上げる装着方法のことを指す。こうすることで、ドアスピーカーから放たれる音がダイレクトに車室内に届けられるので情報量が上がり、一層のサウンドアップが果たされる。
さて、“サウンドクオリティー”代表の越野さんにまずは、これにトライすることの意義について訊いてみた。
「“アウター化”はハードルの高いインストール手法です。ドアの内張りパネルをカットしなくてはなりませんから。なので、これを実行される方はそれほど多くはいらっしゃいません。
しかし、音的なメリットが大きいことも確かなので、音にこだわろうとするときには有効策の1つとなり得ます。ゆえに上級スピーカーを装着される方からは、検討されることが少なくないです。スピーカーの性能を一層引き出せるようになるからです。せっかく購入された高性能スピーカーですから、その実力を存分に発揮させたくなるのは当然だと思います。価格で言うと10万円が1つのラインとなってくるでしょうか。それを超える金額のモデルをお使いの場合には、“アウター化”も視野に入ってくると思います。
とはいえ“アウター化”は、“最後の手段”という性格が強いです。はっきりとした音質向上効果が得られるのですが、順番としては後になることが多いです。例えば高度なコントロール機能の追加や、外部パワーアンプの導入の方がやりやすいですから。ただ、効果の大きさはこれらと比べてひけを取りません。なので、最後には“アウター化”という伸びシロが残っていることは、覚えておいていただきたいですね」
“アウターバッフル”と呼ぶべき工法を実行すると、一層の音質向上効果を獲得可能!
続いては、製作方法の概要と製作費のメドを教えてもらった。
「“アウター化”にはいろいろなやり方があり、細かくは各ショップごとで異なっていると思います。各店ごとでノウハウがあり、それぞれ創意工夫を発揮して製作されていると思います。
当店では、以下のように製作しています。スピーカーの取り付け面がパネル面と同一の高さになるようにドアの鉄板からインナーバッフルを立ち上げて、その上から内張りパネルを挟み込みながら“バッフルボード”を固定します。こうすることで内張りパネルの共振を抑制できます。
なので当店では“アウター化”のことは、“アウターバッフル”と呼んでいます。ドアパネル面に“バッフルボード”を設定することになるからです。
で、この工法を取る場合の基本工賃は、両ドアで8万円(税別)とさせていただいています。ただ、これよりも少ない金額で収まることもあり得ます。一部軽カーの中にはバッフルボードを簡易的な仕様で作るしかない場合があり、そのときには6万円(税別)くらいで完成できます。または“バッフルボード”を外から被せる工程を省けば、製作代を抑えられます。そうすると音的なメリットはやや薄れてしまいますが、見た目を重視される場合にはこれもアリだと思います。スピーカーが見えているとカスタム感がアップしますから。
逆に、車格が大きなクルマでは8万円以上掛かることもあり得ます。インナーバッフルの立ち上げ量が多くなったり“アウターバッフルボード”が大きくなれば、使用する部材の量と手間が増えますから」
さらなる音質アップを狙うなら、工法や部材にこだわるのもアリ!
「なお、工法や部材にこだわるとさらなる高音質化も果たせます。工法的には、“アウターバッフルボード”と内張りパネルとを一体化させるワンピース構造で仕上げると、さらに“アウターバッフル”の利点が増します。“バッフルボード”と内張りパネルとが別体化しているツーピース構造と比べて、内張りパネルの共振を抑制する効果が上がるからです。そしてスピーカーの固定の強度が上がることも利点です。
なおこの工法を取る場合には、一体成形のためのパテ埋め作業等の工程が増え、“バッフルボード”が大きくなったり仕上げの生地を貼る面積が拡大したりするため、製作代も上がります。
そして材料面では、木材にMDFではなくより堅い合板を使うと音と耐久性の両面で性能が向上します。もちろんMDFを使う場合でも防水処理等を万全に施しますが、合板の方が優秀です。そして合板を使った場合にも、製作代は上昇します。
なお実際は、合板を選択される方の方が多いです。“アウター化”を実行される方は音にこだわってそれを検討されるわけなので、せっかくならより良いものをと考えられるケースが多いんです。
ところで、“アウター化”を行う場合には立ち上げたインナーバッフルが筒状になりますが、そうなることで背圧(スピーカーの裏側から放たれる音エネルギー)の抜けが悪くなりがちです。それには、筒の内径を奥に行くに従って広げる加工(スラント加工)を施すと対処できるのですが、それをすることで別のデメリットが発生することもあり得ます。鉄板に空いている穴の大きさを広げる必要が出ることも少なくなく、そうすると強度が落ちますし、リセール時に元に戻しにくくもなります。なのでこの点に関しては、状況をみながら実行するかしないかを判断しています。もともとの鉄板の穴が大きい車種であればスラント加工は有効なので、その場合には実行します。
“アウター化”にご興味があれば、お気軽にご来店ください。さらに詳しくご説明いたします。もちろん、初心者向けのメニューもいろいろとご用意しています。多くの方のお越しを心よりお待ちしています」