明るいけれど落ち着くインテリア
特別仕様車の「サンリット・シトラス(Sunlit Citrus)」。資料によれば“燦々と輝く太陽の光をイメージした”をコンセプトにしたクルマなのだそうだ。
最新版(21年6月版)のカタログの30ページにも、海沿いのクリアな空気とやわらかな陽射しの中で写した室内のカットが大写しで載っている。そのままシートバックを倒して、ボサノヴァでも聴きながら昼寝がしたくなる…そんなシーンだ。カタログには“明るく前向きな気持ちになる室内空間”とも記されているが、それはまさに今の時代と空気を慮ってのことだろう。
実車は、なるほど“いい感じ”だ。とくにシート(やドアトリムのインサート部分)に用いられた売りのポイントであるスエード調人工皮革・グランリュクスのしっとりとした風合いはなかなかの心地よさだ。グレージュと呼ぶグレーがかったベージュ(ベージュがかったグレー?)の色合いも、ピュアホワイトの“真っ白け”より少し明度が低く、ダークグレー内装とのコントラストも少し弱まるから、明るいけれど落ち着く。シートの中央のアクセントストライプは“柑橘系”のイメージどおり爽やかで、織り込まれたアーガイル柄がさりげなく大人っぽい上品さを醸し出す。
シトラスの挿し色×ミステリアスなボディ色
ほかに助手席前のインパネ部分のデコレーションパネルもユニークな装備のひとつで、艶のあるパネルの表面に、指で触るとわかる細かなパターンが施されている。丸いエアコンルーバー(リング外側はサテンクロームメッキ)などのシトラス色の挿し色も効いている。しっかりと厚手のフロアマット、シトラス色のキーシェルも特別付属品だそう。
…と、ここまでこだわるのであれば、ベスト・イン・クラスを誇る同車のインテリアでもあるだけに、ステアリングもレザーであればなお満足度が高まるだろう。特別仕様車には標準装備という360°ビューモニターは、画面の映像の歪みが気にならず使いやすい。
ちなみにボディ色の“プラチナクォーツメタリック”は昨年上級車の『CX−8』から展開が始まった新色で、『マツダ2』でも選択可能に。陽射しの加減で、仄かな範囲でエレガントにもアンニュイにも表情を変化させて見せる、なかなかミステリアスな色だ。
エンジンがより緻密に反応してくれる
一方で搭載するSKYACTIV-G 1.5 にも改良が入った。斜め渦燃焼(Diagonal Vortex Combustion)と言われる、シリンダー内で効率的な急速燃焼を実現する技術の投入がそれで、圧縮比も従来の12.0から14.0に高められ、燃費性能も最大6.8%向上(15S Lパッケージ・2WD・6EC-AT車の例でWLTCモードで19.0→20.3km/リットルに)させたと資料にはある。
今回、街中と高速道路をゆったりとした走行モードで試したが、全体にドライバビリティが向上した中で、とくに出足のスムースさ、シッカリ感と、それによるアクセルワークのしやすさを実感した次第。カタログ数値を見ると、最高出力は変わらず、最大トルクが、従来の141kW(14.4 kgf・m)/4000rpmから142kW(14.5 kgf・m)/3500rpmへと記載の数値が変わっている。
この変更のとおり、日常的な実際のシーンで、ジワッとしたアクセルワークに対してエンジンがより緻密に反応を示してくれるようになった…そう感じた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。