『ルーテシア』はルノーのコンパクトカーで、現行型のプラットフォームは日産『ノート』と共通だ。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)はルーテシアが5mm長い2585mmだが、基本的な寸法は等しい。
そしてプラットフォームの造り込みは、ノートも含めてルノーが中心になって行った。そのためにルーテシアでカーブを曲がると、ルノーの特徴とされるドライバーを中心に据えた旋回感覚を味わえる。車両の挙動変化が良く分かり、操る実感も得やすい。
アクセル操作で車両の挙動をコントロールしやすい
峠道を走ると前輪が踏ん張り、旋回軌跡を拡大させにくい。故意にアクセルペダルを戻すと、前席を中心に車両が回り込んでいく。アクセル操作によって車両の挙動をコントロールしやすく、しかも唐突感がなくて滑らかだから、ドライバーは安心して運転を楽しめる。
乗り心地にも粗さはなく、不快感を抑えたが、街中を走ると少し硬く感じた。路上の細かなデコボコも伝えやすい。それでもドライバーのコントロール性を重視した一体感の伴う運転感覚は、日本車やドイツ車では味わえないものだ。
後席を犠牲にしただけに、運転感覚は奥が深い
注意したいのは後席の居住性だ。前述の通りドライバーを前後輪の中間に座らせたこともあり、後席の足元空間が狭まった。身長170cmの大人4名が乗車した時、後席に座る乗員の膝先空間は、握りコブシ1つ分に留まる。ノートは握りコブシ2つ分を確保したから、ホイールベースは同等でも、ルーテシアの後席は足元空間が半分に減ってしまう。
従ってルーテシアはファミリーカーには適さないが、後席を犠牲にしただけに、運転感覚は奥が深い。ベテランドライバーに好まれるタイプだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
渡辺陽一郎|カーライフ・ジャーナリスト
1961年に生まれ、1985年に自動車雑誌を扱う出版社に入社。編集者として購入ガイド誌、4WD誌、キャンピングカー誌などを手掛け、10年ほど編集長を務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。