クルマ好き、運転好きにとって目は大切である。視力にばかり注目が集まるが、同時に大切なのは視野。視野が狭くなっていく網膜色素変性は治療法がなく、40代以上では20人に一人が有病者という視野が欠けていく緑内障は、早期発見&早期治療開始が大切だと何度も書いたとおりだ。
そしてはたと気づく。私、検査やったことないよね? ネット上にある緑内障セルフチェックはときどきやっているけれど、これで本当に大丈夫なのか? そこで、これまでの取材でお世話になっている西葛西・井上眼科病院の國松志保先生に検査をしていただくことにした。
緑内障を見つけるための3つの検査
緑内障のメカニズムを説明しよう。目のなかの水圧(眼圧)が高まる→目のなかにある視神経が傷つく→傷ついた神経部分は脳に画像を届けられないので視野が欠ける、である。ここでいう水は涙とはまったく関係ないので、泣けばいいってものではない。
目は水風船みたいなもので、常に房水という水が作られると同時に、排水されて圧を保っている。ただ、出口がなんらかの原因でつまると排水できず圧が上がるのだ。なんだかダムに似ている。水がたまりすぎるとダムは決壊するが、目は緑内障になるのである。
ゆえに、緑内障を見つけるためには、
1)眼圧検査
2)眼底検査(目のなかの視神経を見る)
3)視野検査(実際に見えていない箇所をつきとめる)
ただし、なぜか日本人は眼圧が正常でも緑内障になるケースが驚くほど多いので、眼圧が正常だからといって喜んではいられない。
眼圧検査のあと視野検査へ向かう。視野検査は、眼底検査で必要と判断された場合に行うため多くの施設で予約制だが、今回は特別に体験させていただいた。視能訓練士さんの指示に従い、片目ずつ中心にある一点の小さな光を見つめたまま、その周囲のどこかに光が見えたらスイッチを押すという検査である。
リズミカルに、ポチ、ポチ、と押していくのだが、途中で10秒近く光が見えなくなった。え? え? これって周囲が見えていないってこと? 急に胃が痛くなってきた。
このあと、眼底の写真を撮って(瞳孔を開く薬を使うので検査後数時間は運転不可!)検査が終わり、いよいよ診察結果を聞くときがきた。診察室に入ると國松先生の目の前にあるディスプレイに、私の視野検査の結果が大きく映し出されている。そこに、なんと、黒い点が!
黒い点=視野が欠けている部分! えっ、ということは?
國松先生は、にっこりと微笑みながら、口をひらいた。
「この黒い部分ですね。これは盲点といって、だれにでもあるんですよ。でもほら、右と左の目の盲点の場所が違うでしょう? なので、視野はどこも欠けずに見えているんですよ」
なんだ~、そうか、そういうことか。安堵の汗がどっと出る。國松先生の診察結果は、眼圧も正常。眼底検査で撮影された視神経も、きれいだということだ。
まさか、自分の目にそんな爆弾が!
しかし、それでは終わらない。
「えっとですね。岩貞さんの場合、ちょっと水の出口が狭いんです。なので、もうひとつだけ検査させてください」
出口が狭い? ということは、ダムの放水作業ができずに、ダム決壊ということ?
改めて撮っていただいた写真によると、一般的に3mmほどある数値が、左右ともに2.5mm前後しかないという。これが加齢などによりさらに低くなり、ついに放水している箇所がふさがれると一気に水圧(眼圧)急上昇。それは急性原発閉塞隅角緑内障、通称「急性緑内障発作」を起こすという。
……。
「検査さえしていれば大丈夫。数年に一度、検査してこの数字を確認していきましょう。あと、白内障になると角膜が厚みをもち、水の出口を塞いでしまうので、白内障になったら適切なタイミングで手術してくださいね。」
まさか、自分の目がそんな爆弾を持っていたとは! これを知らずに放ったらかしておいたら、きっととんでもないことになっていたに違いない。
検査大事!
検査、すごく大事!!!
クルマ好きのみなさん。眼底検査や視野検査はどこの眼科でもうけられます。ぜひ!
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。最新刊は「世界でいちばん優しいロボット」(講談社)。