第2世代となった『4シリーズグランクーペ』
商品コンセプトは“プレミアムミドルクラスの4ドアクーペ”モデル。ベースの2ドアクーペは2020年10月に日本市場でも導入済みだったが、今年夏(7月)、この『4シリーズグランクーペ』も第2世代の新型に切り替わった。
スタイリングは、これまで通りの、いわゆるファストバック。ところがよくよく観察すると、リヤクォーターウインドの“すぼませかた”など新しく、ドアハンドルも2ドアクーペはグリップ式だが、新しいフラップ式(ハンドル自体はボックス形状になっている)が採用されるなどして新鮮味を出している。
新しい『4シリーズ』の例の大型キドニーグリルは、観賞の対象になり得るかどうかの結論は個人的にはもう少し時間が必要だが、運転している時には自分には見えないし、思えば戦前のBMW(『303』/1933年)の最初のキドニーグリルは、そもそももっと縦に長いデザインだった。
荷物を載せてどこかに旅に出てみたくなる
試乗車は「440i xDrive」で、同グレードの2ドアクーペと運転席まわりの雰囲気は共通。後席はレッグスペースは十分な余裕で、ヘッドルームも何とか実用になるクリアランスを残していて、セダンの代わりに使うとしても通用する。シートは座るとピタッと身体をホールドするタイプだ。
ラゲッジスペースはおおよそ奥行き1000mm、幅980mm、カバー下530mmほどで、床面は奥(クルマの前方方向)にかけて若干の傾斜があるものの、広く十分な容量がある。コロナ禍がまだ完全に収束しない今、こういうラゲッジスペースを見せつけられると、つくづくここに荷物を載せてどこかに旅に出てみたいものだ……と思わせられる。
いかついルックスから想像するよりもエレガント
ごく短時間だったが試乗した印象は、“M”のバッジがつく多少いかついルックスから想像するよりもずっとエレガントな印象だった。とくに気を良くしたのは乗り味が非常になめらかで、低速を含め常にフラットライドが保たれている点。1840kgの車重がいい意味でクルマを路面に押し付けている感じがあり、xDriveということで、タイヤがしっかりと路面をつかんでいる実感も味わえる。
それとステアリングも決してクイック過ぎず、街中で交差点を曲がるような場面でも終始、挙動が穏やかだから、リラックスした気持ちでドライブさせられる。
搭載エンジンは387ps/51.0kgmと十二分なスペックの直6の3リットル。普段は“爪”を隠してあくまでジェントルだが、ドライブモードを切り替え、アクセルを踏み込むと、決して粗暴ではないが、スペック相応の力漲る加速が味わえる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。