昨今はSUVの売れ行きが好調で、新車として売られる小型・普通乗用車の約30%を占めるなど、ミニバンを上まわる人気のカテゴリーだ。そのため新型車の発売も活発で、2022年には日産『エクストレイル』、マツダ『CX-60』、ホンダ『ZR-V』が登場して注目された。
今回はその注目モデルたちの強みをサイズ、走り、利便性などの視点から徹底比較しよう。
◆ボディサイズは三者三様
●ボディサイズ(全長×全幅×全高)
エクストレイル 4660×1840×1720mm
CX-60 4740×1890×1685mm
ZR-V 4570×1840×1620mm
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この3車はボディサイズが異なるが、車内の広さにはあまり違いがない。つまり全長が4570mmに収まるZR-Vは、空間効率が優れている。
◆「ターボ×e-POWER」が強力なエクストレイル
エクストレイルのプラットフォームは、アウトランダーと共通だがメカニズムが異なる。エクストレイルはハイブリッドのe-POWERのみを搭載しており、発電用エンジンには個性がある。圧縮比を変化させる機能を備えた直列3気筒1.5リットルエンジンに、ターボを装着したからだ。
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このVCターボエンジンは、負荷が小さい時には圧縮比を高めて低燃費走行を行う。登り坂などでパワーが必要な時は圧縮比を下げてターボを作動させ、発電を積極的に行う仕組みだ。エンジンはあくまでも発電用だが、アクセルペダルを深く踏むとエンジン回転を高めるなど、自然な運転感覚にも配慮した。
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そしてX e-4ORCEやG e-4ORCEが搭載する4WDは、後輪にもモーターを搭載して4WDを成立させた。モーターは駆動力の増減を素早く制御できるから、走行安定性を高める制御も行いやすい。峠道などを走る時も、旋回軌跡を拡大させたり、後輪が横滑りを生じて挙動が不安定になるのを防ぐ。
つまりエクストレイルの価値は、VCターボを使った高効率な発電用エンジンと、綿密なモーターの駆動力制御による優れた走りに置かれている。
◆直6エンジンとFRレイアウトが心地よいCX-5
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CX-60の特徴は、パワーユニットと駆動方式にある。4種類のパワーユニットを用意するが、最も注目されるのは直列6気筒3.3Lクリーンディーゼルターボだ。マイルドハイブリッドも選べる。駆動方式は後輪駆動の2WDと4WDになる。
これらのメカニズムを採用した一番の理由は、ディーゼルの排気量を3.3Lに増やして、燃焼効率を高めることだ。CX-5の直列4気筒2.2リットルディーゼルよりも排気量大きいのに、燃費性能が優れている。
問題は高効率な3.3リットルの排気量を実現させるには、気筒数の多い6気筒が必要になったということだ。走りの良さも考慮して直列6気筒が採用され、横置きのレイアウトでは無理が生じるから、縦置き方式の後輪駆動プラットフォームを採用した。
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ディーゼルエンジンは実用回転域の駆動力が高く、2WDのWLTCモード燃費は、マイルドハイブリッドを装着しないノーマルタイプでも19.8km/リットルだ。軽油価格の安さも考慮すると、燃料代はハリアーハイブリッドと同等であり、高い動力性能と低燃費を両立させたと言える。
しかも後輪駆動だから前後輪の重量配分が優れ、車両重量の割に良く曲がる。峠道などではボディがコンパクトに感じるほどだ。つまりCX-60の特徴は、直列6気筒ディーゼル+後輪駆動によるバランスの良い走りだ。
◆コンパクトなパッケージが魅力のZR-V
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ZR-Vは、ボディが比較的コンパクトな割に後席の居住性も優れ、インパネの周辺は『シビック』と同じく上質に仕上げた。後席の座り心地は体の支え方が甘いために改善の余地を残すが、荷室容量も含めてファミリーカーとして使いやすい。
その一方でハイブリッドのe:HEVは、動力性能に余裕を持たせて加速は滑らかだ。走行安定性も優れ、SUVとして総合的なバランスが優れている。
以上のようにエクストレイルは新しいVCターボに個性があり、CX-60は直列6気筒エンジンと後輪駆動の懐かしい組み合わせによって、高い動力性能と低燃費を両立させた。ZR-Vはメカニズムの個性こそ弱いが、幅広いユーザーが使いやすい適度なサイズのSUVに仕上げている。好みや用途によって選べる3車種が出そろったと言えるだろう。