普段乗用車を愛用しているユーザーにはちょっと意外に思うかも知れないが、カスタムベースとして商用車は人気。中でも手ごろな価格&サイズ感でトヨタ『プロボックス』はさまざまなカスタムビルダーが手がけるベースになっている。その手法を見ていくこととしよう。
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プロボックスと言えば4ナンバーのいわゆる“ライトバン”。仕事で使う営業車や荷物運搬の貨物車というイメージが強いだろう。しかしカスタムユーザーのアンテナは商用モデルにも及んでいる。その良い例がトヨタ『ハイエース』だろう。商用貨物のハイエースには数多くのカスタムが見られるのもプロボックスと同様の理由から。
プロボックスなどの商用車は近年の乗用モデルのように華美な装飾を施していない、いわゆるプレーンでシンプルなボディが特徴。そのため、パーツの投入や部分的な加工などを施すことで自分だけのオリジナルカーを作りやすいのだ。しかもプロボックスは同クラスの乗用2BOXに比べると、装備などが簡素なこともあって価格もお手頃、その分の浮いた費用をカスタムに回すことができるのも賢い選択と言えるだろう。
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東京オートサロン2024の会場内にはあちこちにプロボックスベースのカスタムが出展されていたので見て回ることにした。そこから見えてきたプロボックスのカスタムは、今時の潮流のひとつであるアウトドアやオフロード思考が強いと言う点だった。もちろんそれらに合わせたパーツやカスタム手法も進化しているようだった。従来はスズキ『ジムニー』やハイエース、日産『キャラバン』などのカスタムを手がけているショップが、自ら培ったカスタムテクニックをプロボックスに投入しているようにも見える各車両。それだけに、ショップごとの個性や得意分野がカスタムに反映されているのも面白いところ。
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カスタムスタイルで目立ったのはやはり足まわり。ちょいとリフトアップを施した上に、ホワイトレターなどのオフ系のタイヤを組み合わせるのが定番。ホイールもゴツいオフ系のデザインがフィットする。リフトアップによる腰高のフォルムがプロボックスには妙に似合うのもそのボクシーなフォルム故だろう。しかし少しのリフトアップとタイヤ&ホイールを変えるだけで、いきなり商用車の香りは払拭され、新しいSUVモデルを見ているような気分にさせてくれるのもプロボックスのポテンシャルの高さなのかも知れない。
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さらに外装にオフロードのテイストを全面的に取り入れるのも似合う。フロント回りならばグリルガードや補助灯、サイドには樹脂の素地で仕上げた無骨でワイルドなオーバーフェンダー、さらにルーフトップにはゴツいルーフラックやツールトップテントを装備すれば、完成度はグンと上がる。
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一方でプロボックスのもうひとつのカスタムスタイルとしてはロワードがある、チョイ旧車なモディファイも実はもてはやされているのだ。結構なロワードを施した上でリムありのちょっとクラシカルなホイールを履きこなせばレトロ風味のスポーツカスタムにもなる。外装はむだな虚飾を排してシンプルデザインにするのもこの手のカスタムには似つかわしい。レトロやレーシーなどテーマを持ってカスタムしてみると良いだろう。
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また、プロボックスのカスタムが盛んなことをうかがわせるのが専用パーツの充実だ。その代表的なものがフェイススワップキットだ。現代流の異形ヘッドライトを外してシンプルな角ヘッドライトに変更できるプロボックス用のフェイススワップキットがすでに登場している。これさえあればメーカー不明、年式&正体不明のアウトドアビークルを作ることも簡単にできてしまう。
プロボックスの数々のカスタム例を見てインスピレーションがわいたという読者は、カスタムベースとしては良い意味で完成度の低いプロボックスをベースに、オリジナルの一台をプランしてみると良いだろう。
土田康弘|ライター
デジタル音声に関わるエンジニアを経験した後に出版社の編集者に転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務。独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がけ、カーオーディオ雑誌の編集長も請負。現在もカーオーディオをはじめとしたライティング中心に活動中。