改めてご紹介すると、車名『ATTO 3』の“ATTO(アット)”は、1秒の100京分の1を表わす物理学で測定可能な最小の時間の単位の“attosecond”に由来するのだそう。
文系出身の筆者にはそれ以上の説明ができる知識はないが、車名でいうと『ドルフィン』『シール』など海洋系生物にちなんだモデルに先んじて、BYDの日本市場進出第1弾となったのがこのモデル、ATTO 3だった。
このATTO 3のボディサイズは全長4455mm×全幅1875mm×全高1615mm、ホイールベースは2720mm。『ドルフィン』よりひと回り大きく、Cセグメント相当だが、クリーンでスッキリとした外観スタイルのせいか、実車に接していると実に手頃なボディサイズのクルマに思える。最小回転半径は5.3mの扱いやすさだ。なおリヤのエンブレムは最新モデルでは車体中央にBYDのロゴが付くが、初期型は“BUILD YOUR DREAMS”だった。

一方でインテリアはやや“クセ強”というべきか。全体のデザイン、演出はフィットネスジムと音楽(エアコン吹き出し口はジュークボックスだとか)をテーマにしたとのこと。乗っているウチに見慣れるものの、ごくごく個人的な好みで言えば、たとえばVW『ID.4』のようなスッキリした雰囲気であれば外観にも見合うのではないか……とも思う。なお現在は15.6インチに大型化したセンターディスプレイは、縦と横に回転させられるギミックが標準で備わる。
フロントシートはスライドとリクライニングが電動で調節可能。リヤシートはスペースもまったく不満はなく、快適に過ごせる。ラゲッジスペースは床面の高さが2段階に使い分けでき、後席を使用した状態での容量もまったく問題なしだ。

動力性能は150kW/310Nmだが、1750kgの車重との兼ね合いで、ゆったり走らせることも俊足を味わうこともでき、低重心ということもあり、ちょっとしたワインディングも気持ちよく走らせられ、ふと羊の皮を被った狼同然かも!? などとも思わせられる。通常のノイズが少なくなめらかで重厚な乗り味は、我が家のシュン(柴犬・オス・3歳)にも好評。
まだ気温が低い時期の深夜だったが、90kW/200Aの急速充電スポットを使い、30分でバッテリー残量40%が87%(メーター表示は409km)にできた。カタログ値の一充電走行距離は470km、電費はWLTCモードで139Wh/km。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。