近年のアウトドアブームに引っ張られて、すっかり定着したのが“バンライフ”。いわゆる車中泊仕様のクルマも開発が加速し、最近ではメーカー純正モデルも登場。日産ではバン系の『キャラバン』『NV200バネット』をベースに、内装を部屋のように仕上げた「MYROOMシリーズ」と、車内後部へ手軽にベッドを設置できる「マルチベッドシリーズ」を用意する。

ご紹介するのは、日産『セレナ AUTECH』をベースにしたマルチベッド仕様。セレナと聞けば“日産を代表するミニバン”というイメージを思い浮かべる方が多いと思うが「AUTECH」はご存じだろうか? AUTECHとは“プレミアムスポーティ”をコンセプトに、様々なカスタムカーづくりで蓄積したクラフトマンシップを継承し、スポーティで高級感漂うスタイリングを特徴として、多くのファンに愛されながら今もなお伸長し続けているブランドである。


プレミアムスポーティのコンセプトを注ぎ込んだセレナ AUTECHは、専用エクステリアパーツにより、ミニバンでありながらも、低重心かつワイドな印象を与えるスポーティな外観が特徴だ。今回は、カスタムが施された『セレナ AUTECH』のマルチベッド仕様を実際に使って、ユーティリティを検証した。

体験してもらったのは、マルチアングラーの一木花漣さん。一木さんはプロアングラーつまり釣り人で、世界を股にかけてさまざまな魚種の大物を追い求めその模様を自身のYouTube などで発信している。国内でも全国の釣り場やイベントへ、自ら愛車のハンドルを握って精力的に飛び回っているので、愛車に求められる条件も厳しくなるだろう。

そこで一木さんとともに、実際にフィッシングx車中泊の想定で『セレナ AUTECH マルチベッド』がどのように役立ってくれるのか、リアルなロングドライブインプレッションで試してみることにした。
e-POWERの力強い走行性能、AUTECHの高級感あふれる特別な1台

目指したのは、日本第2位の面積を誇り、関東のブラックバスフィッシングの聖地とも言うべき霞ヶ浦。首都高から常磐道を経て、2時間弱のドライブだ。e-POWERは初体験の一木さん、運転席に収まり走り出すと、すぐにガソリンモデルとは異なるフィールに気がついたようだ。「これって、ハイブリッドですか?すごく静かですよね」と問われたので簡単にメカニズムを説明すると、自身の愛車である、ミドルサイズの国産SUVと違う感覚に納得した様子だ。
「発進や加速のレスポンスがいいですね。高速道路での合流なんかもとても楽です」その日は関東の平野部でも夜には雪が降る予報で、空模様が危ぶまれた。そんな場合にもe-POWERを選べば、電気モーターの緻密な駆動力制御によって安定した走りで運転手をサポートしてくれる。

運転感覚もだいぶ違うセレナに興味津々の様子だが、それ以上に関心を持ったのが室内空間だ。「普段はSUVに乗っていますけど、ミニバンでも運転しやすいですね。それに室内の広さは羨ましい。イベントに参加するときは、グッズなどの入った段ボールをいくつも持っていくんですよ。私の愛車もSUVとしてはけっこう荷室が広いと思うんですけど、いっぱいになっちゃって。このセレナくらい広ければ、余裕を持って荷物を積めますね。インテリアも高級感があってとても質感が高いです」

室内の高級感は、セレナ AUTECH マルチベッドの真骨頂だ。AUTECHというカスタムカーがベースになっていることで、ブルーのステッチが入るレザレットシートや、光を受けるとさりげなくブルーに光る紫檀柄をあしらったダッシュボードのダークウッド調フィニッシャーなど、質感の高いマテリアルを多用。ブルーステッチのステアリングホイールも、手触りのいい本革巻きになるなど、通常のセレナとは異なる空間となる。
2ステップであっという間に車内は広々ベッドの空間に!寝心地と防水性に優れたベッドマットがすごい

湖畔に到着すると、さっそくマルチベッドの設置にとりかかる。前席の背後にベッドフレームを取り付けリアシートを倒すと、あとはベッドマットを配置するだけ。


ラゲッジスペースに重ねて収納してある4枚のうち、2枚はトノカバーのように荷室上部を覆う形で積まれているので、残り2枚を後席上部に置くことで、奥行き2,120mm、幅1,320mmと、セミダブルサイズを超えるベッドが完成する。シートやステアリングホイール、インストなどと同じくブルーのステッチが施されるのもセレナ AUTECHならではのニクイ演出だ。

トランスポーターやキャンピングカーのエキスパートであるオグショー製のマットは、寝心地のいい4層構造で、耐荷重150kgという本格的なもの。そのぶん重量は多少あるが、それでも一木さんひとりで問題なく設置できる程度だ。工程もシンプルで、はじめての作業でも10分とかからず完了した。


セレナ AUTECH マルチベッドのマットの下は、奥行き935mm、高さ430mmのラゲッジスペースだ。一木さんはそこから愛用のフィッシングギアを取り出すと、ベッドの上で釣りの準備をはじめた。天井までの高さは830mmあり、頭上もゆとりのある空間で、座って過ごすのも快適だ。セレナ AUTECH マルチベッドは、快適な休憩のためのスペースを確保できるように、サードシートが取り除かれている。これも効いている。

「窮屈な感じはまったくないですね。ベッドも簡単な取り付けだったのに安定していますし、肌触りも、座り心地や寝心地もいいですよ」さらにベッドの高さは、セレナの人気装備であるハーフバックドアことガラスハッチの開口部とほぼ同じ。身支度を整えてから、ベッドの上に置いた釣り竿をここから取り出せば、転倒やドア挟み込みで破損する危険が減るので、釣り人には非常にありがたい。

支度を終えた頃には、生憎の冷たい雨がパラつきだしたが、湖岸に降り立った一木さんは得意のビッグなルアーを投げはじめる。気温も水温も低く水面が波立つ悪条件だったが、ひたすらルアーを投げ続ける姿はさすがプロだ。

雨と波飛沫を浴び、身体も冷えたのでしばし休憩。そんなとき、レザーのような見た目と手触りでありながら、耐久性と耐水性に優れたレザレットシートは、水気を帯びた荷物や上着などを安心して置けるので心強い。釣りだけでなく、キャンプやウインタースポーツなど、濡れたり汚れたりしやすいレジャーや、小さな子どもやペットを乗せるときにはありがたい限りだ。
使い方次第でレジャーもビジネスにも大活躍間違いなし『セレナ AUTECH マルチベッド』があなたのカーライフを豊かにしてくれる

ひと息ついてSNSに掲載するための写真を撮りはじめると、セレナ AUTECHのエクステリアを「色もきれいだし、カッコいいですよね」という一木さん。AUTECHブランド発祥の地である、湘南の海と空をイメージしたブルーと、砂浜に打ち寄せる白波を思わせるシルバーの組み合わせだと伝えると「こんなに荒れた霞ヶ浦じゃなくて、次回はきれいな海辺でリベンジしたいですね(笑)」と冗談が飛び出すくらい、お気に入りの様子。

SNSやメディアでの情報発信もプロの仕事だ。撮影した写真をすぐさま確認し、アップの準備に取り掛かった一木さんだが、パソコンのバッテリー残量が不安に。そこで活躍したのが、積み込んでおいた「ポータブルバッテリー from LEAF」だ。
日産リーフから回収したバッテリーを用いるポータブル電源で、容量は633Wh。USB-A/CとACコンセントを2口ずつ備え、パソコンを使いながらスマホを充電するくらいは余裕だ。「釣り場とか、アウトドアでパソコンを使うこともあるので、これは便利ですね」という一木さん。ワーケーションなどで電源に不安があるというなら、ぜひ車内に備えておきたいアイテムだ。
帰路はついに白いものが舞いはじめたので、一木さんには後席で休息してもらった。ベッドを使えるのは停車時のみだが、さざなみがモチーフの型押しを施したレザレットシートも、座り心地や肌なじみが良く、快適な移動に貢献する。

ミニバンとしての高い基本性能はそのままに、デザインやディティール、機能面すべてにおいて居心地のいい滞在空間も提供してくれるのが『セレナ AUTECH マルチベッド』。レジャーにも、ビジネスにも、大いに活躍することは間違いないだろう。
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