毎年恒例の、カーオーディオ業界の一大イベントの1つ、『パイオニア カーサウンドコンテスト』が、今年も盛況のうちに終了した。今回のこのコーナーでは、松居さんなりの独自視点で今年の“パイコン”を振り返っていただこうと思う。今回の大会はどのような回だったのだろうか…。
今年も『パイオニア カーサウンドコンテスト』が終わった。
このイベントは僕にとって特別な大会であり、思い入れも強い。これまで開催された18回すべてにエントリーしてきたし、さまざまな思い出もある。
今回は、今年の同コンテストに参加して感じたことを綴らせていただこうと思う。
まずは、これまでこのコンテストを続けてこられたパイオニアに敬意を表したい。昨今の事情から今年でひと休みすることになったが、1回のお休みで再来年は復活すると聞いている。復活を心から願っている。
さて。
オーディオを料理に例えるなら、このコンテストは僕にとって、自分が作っている物が「美味しいのか」どうかを試す場所であり、自分の味覚を修正したり気づかなかったアイデアを見つけ出すことができる、とても刺激的な場所であった。
そのような場所であり続けたのには理由がある。それはこのコンテストが他のそれとは大きく違っていたからだ。何が違うかというと、“審査の精密さ”だと思っている。
回を重ねる毎に参加者の音の差が小さくなってきたのだが、その中にあってもよくぞあれだけの数を正確に審査していくものだと、毎回大いに感心させられる。エンジンを止めての冷静な試聴ができるからなのか、審査員をサポートするシステムが良いからなのか…。
それにしても、18年間も続いてきたことは本当に素晴らしいことだと感じる。
今にして思うと、このコンテストが始まった頃は、デジタルクロスオーバーの使い方を模索していた時期だった。試行錯誤の繰り返しでとてもエキサイティングな時期であったと思う。その後、直線位相が選択できるようになり、数年間この可能性にチャレンジした。
そうして年々、参加している人たちのレベルが上がっていった。装置の性能の差という部分が縮まってきて、「課題曲の音楽性」へとテーマが移り、段々と芸術性が評価される大会に変わってきていた。
また、個性的なスピーカーやパワーアンプ等の展示会のようにもなってきた。それはそれで楽しめる部分でもあった。年々課題曲に壮大でアバンギャルドな作品が取り上げられるようになっていったことも興味深かった。
この18年間を振り返ると、そのような変化を伴ってこの大会は続いてきたと思う。
そんな中、今年はレギュレーションが大きく変更された。パイオニア・ワンメイクの闘いになったのだ。そのためか、課題曲も割とシンプルなものが取り上げられることとなった。そして、装置の個性ではなく解釈の違いを競う闘いになったように強く感じた。
地域の雰囲気もプラスされ、作り手の個性を大きく反映するものになっていたようにも思う。
「攻める感じ」、「一歩引いた感じ」、「大胆な表現」、「やり過ぎ」、「お洒落」、いろいろな“個性”が会場内に展開していたように感じた。ワンメイクになったことで全体の均一化が図られるのかと思いきや、むしろ逆だったように思う。他の参加者のクルマを聴きながら、いろいろ楽しませていただいた。
音楽の表情、表現への思い込み等、単純ではない要素の中で行われるコンペティションになってきたと思う。その傾向がさらに強まったのが、今回の大会だったのではないだろうか。
僕はこの方向性については大歓迎だ。趣味のオーディオ & クルマの楽しみの本流だと思う。
ちなみに、今年のアンティフォンのテーマ(コンセプト)は、「日本のハイブリッド、日本のカロッツェリア」だった。ということで、日本的な、いわば“和食的テイスト”を狙ってみた。
結果、お洒落なイタリアンに負けてしまったのだが…。
まあ、それはそれとして、今回の『パイオニア・カーサウンドコンテスト』は例年以上に楽しく、興味深いものになっていたと思う。
次回も、さらに雑感を綴らせていただく。もう少しお付き合いいただけたら幸いだ。