今週も、【CAOTY2015】の上位入賞モデルのインプレッション・リポートをお贈りしていく。【CAOTY2015】とは、海外カーオーディオブランド製品を数多く正規輸入・販売展開しているイース・コーポレーションが発表する、売れ筋ユニットのランキングである。
今回は、「2chパワーアンプ6万円以上部門」の上位2台と、6位以下の中での注目機1台についてお伝えする。
試聴会場はこれまでと同じくイース・コーポレーションの試聴室。リファレンスとして使用したスピーカーは、RSオーディオの『RS Revelation 165』(税込価格:22万6800円)、使用ケーブル類はすべてモンスターカーオーディオという環境で、試聴を行っていった。
第2位 ロックフォード・フォズゲート T400-2(税込価格:7万2360円)
対象製品の価格帯が幅広く、かつ新登場モデルも多々あり白熱した同部門だが、1位と2位は昨年と変わらず、ロックフォード・フォズゲートのパワーシリーズの2台がその順位をキープした。超小型パワーアンプの隆盛にも、グラウンドゼロの猛追にも屈することなく、貫禄のワンツーフィニッシュを果たした。
ちなみに、こちら『T400-2』は、1位に輝いた『T600-2』と比べて、ボディサイズがひと回り小さい。パワーシリーズを使いつつ、インストールスペースをある程度コンパクトに収めたいと考えた場合には、こちらが選ばれていると思われる。サイズは207×290×54mm。車種によってはシート下に収めることも可能だろう。現実的かつ合理的なスタイルで、当機のサウンドを楽しんでいるユーザーも多いはずだ。
さて、今年に新登場したモデル等々を聴いた後で改めて当機をテストして、どのような印象だったのかというと…。
まず、3位にランクした超小型モデルである『T400X2ad』と比べての印象からお伝えしよう。サウンド傾向でいうと、“重さ”と“キレ”を特長とするところは変わらずで、それを踏まえた上で『T400X2ad』はソリッドでクール、『T400-2』はどちらかと言えばウォーム。好みの問題、というレベルだが、当機のほうが音にコクがあるように感じた。
そして、それ以外のすべてのアンプと比べての当機ならではの特長と言えば、ずばり、“低域の深み”ではないだろうか。エネルギー感があり、説得力もある、質の高い低音を楽しめる。
ノリの良いHi-Fiサウンドを目指すには、ぴったりの1台と言っていい。コストパフォーマンスの高さも光る。納得の実力機である。充実感の高いサウンドを満喫できた。
第1位 ロックフォード・フォズゲート T600-2(税込価格:10万440円)
「2chパワーアンプ6万円以上部門」の第1位に輝いたのは、当機『T600-2』。【CAOTY】がスタートして以来、4年連続の勝利である。ちなみに、当機の発売開始は2007年。初登場から8年目を数えてなおも売れ続けているのだ。しかも、2位以下に“大差”をつけているという。いやはやなんとも「凄い」のひと言だ。
ところで当機は、9モデルある通常パワーシリーズ中、2ch機のトップモデルだ。さらに言えば、4機種あるAB級アンプ中のトップモデルでもある。AB級4ch機のトップモデル『T600-4』(税込価格:12万9600円)よりも、1chあたりの出力と価格は当機のほうが上なのだ。人気の秘密は、まさしくそこだと思われる。AB級パワーシリーズアンプの中での“最高のサウンド”欲しさに、当機が買われているのではないだろうか。
実際に音を聴いてみて、実力の高さを改めて確認できた。これより前に聴いた『T400-2』の良いところがさらに伸びている。つまり、低域の深みとキレ味の鋭さが、より際立っている。
その上で、ダイナミックレンジが増大していることも感じる。抑揚が大きいので、音楽がよりドラマチックに表現される。音楽性が高いのだ。そして、情報量も増しているので、ステージをより立体的に感じ取れる。高域の繊細さ、スムーズさも光り、耳当たりも実に心地良い。サウンドがリッチだ。
まさしく、“名機”という貫禄に満ちたサウンドが堪能できた。この実力を持ってすれば、2016年もまた、大きな支持を集めることは間違いないだろう。「パワーシリーズを超えられるのは、パワーシリーズだけ」、なのかもしれない。新たなパワーシリーズが登場するまでこの順位に変動はない…、そう思えてしまうほどの完成度の高さを感じた。
☆注目モデル
第7位 RSオーディオ RS Revelation A20 (価格税込:24万8400円)
同部門の注目モデルとして、当機をチョイスした。ドイツのスーパーハイエンドブランド、RSオーディオから放たれた、注目の新グレード「レベレーション・シリーズ」の2chモデルである。登場したのが7月、さらにこの価格でありながらの7位入賞は、十二分に立派な成績と言っていい。
ところで、今年の同部門のランキングで、個人的にあることを興味深く思っていた。それは、グラウンドゼロの上級グレード、「リファレンス・シリーズ」の動向だ。20万円オーバーという高額アンプにも関わらず、昨年は、3台がランクインしていた。しかし、今年は1台のみ。
このような結果になった主な要因は、グラウンドゼロのミドルグレードモデルの充実も含め、同部門全体の製品構成が厚くなったからであり、興味深く思えたポイントもそこだ。
それに加えてさらに、「レベレーション・シリーズ」の登場も、多少なりとも影響しているはずだ。当シリーズは確実に、ハイエンド・パワーアンプ市場に刺激を与えた。そう言い切れるほどの、鮮烈なデビューだったのだ。
《編集部 藤澤の一言レビュー》
素直に聞き惚れるレベルのパワーアンプ、金額を見れば当然か。音の凹凸が解像感を保ちながら濃い密度で全帯域をスムーズに鳴らしてくれる。各楽器やヴォーカルの立体感も申し分なく、奥行きや余韻の表現も美しい。ハイエンドパワーアンプ導入時には必ず候補に入れて欲しい機種だ。
さて、ここまで「6万円未満部門」の6台、「6万円以上部門」の5台を聴いてきた。それらはすべて10万円台以下のモデルだったわけなのだが、それらと比べての実力差はどうなのか…。
一聴して、格の違いをはっきりと感じた。『T600-2』が名機であることは疑いようがないのだが、当機はそれに対して倍以上の価格帯である。情報量の多さ、解像度の高さ、S/N感等、基本的な部分の質が、それぞれ上をいくのは当然だ。
その上での当機の特長とは、ひと言で言うと“実直さ”ではないだろうか。もろもろのバランスは至ってナチュラルだ。あくまでも、正しく原音を再現してみせている。
ただし、それだけでは終わらない。味わいが濃く、コクがあり、さらにはエネルギー感も十二分。誇張はないが、音楽性は満点だ。そして、音量の小さな楽器の輪郭をしっかりと描き出すあたりもさすがだ。加えて、リアリティがこの上ない。例えば打楽器。スティックの木の素材感と、シンバルの鉄の素材感、それぞれを実にリアルに感じることができる。
RSオーディオらしい端正なサウンドと、きめ細かい表現力が魅力の、手応えある1台だ。ハイエンドパワーアンプの新たな選択肢の1つとして、存在感が高い。上級モデルの中から自分好みをアンプを探しているのなら、当機のチェックをお忘れなきように。
さて、「2chパワーアンプ6万円以上部門」についてのリポートは以上だ。次週は、「4chパワーアンプ6万円未満部門」についてお伝えする。お楽しみに。