スピーカー交換を自分でやってみたいと考えるドライバーは少なくない。ただし、それをそつなく完了させるにはさまざまなコツがいる。配線作業においてもしかりだ。当記事では、そこのところにフォーカスする。
配線作業のあらましから注意事項、そしてプロに任せるという選択肢についてまで、じっくりと解説していく。
目次
純正ケーブルを流用する場合の配線作業のあらまし
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その1「コアキシャルスピーカー」の場合
最初に、純正ケーブルを利用する場合の配線作業の内容を解説していく。配線作業を効率的に、さらにはリーズナブルに完了させたいと思うなら、スピーカーケーブルは純正のものをそのまま使った方が良い。なおその際の配線作業の内容は、交換するスピーカーのタイプによって、さらには車両の状況によっても変わってくる。なのでここでは代表的なケースを3つ説明しておこうと思う。
まずは、交換するスピーカーが「コアキシャルスピーカー」の場合の作業内容について説明しよう。なお「コアキシャル」スピーカーとは、高音再生を担当するツイーターが中低音の再生を担当するミッドウーファーの同軸上に取り付けられているもののことを指す。
で、「コアキシャル」スピーカーは「フルレンジ」スピーカーとも呼ばれている。ツイーターとミッドウーファーとが一体化しているので、1つのスピーカーユニットだけで全帯域の音が鳴らされる格好となるからだ。
なので、スピーカーケーブルの配線作業もシンプルだ。基本的には、ドアのスピーカーのところまで来ている純正ケーブルに、付属されている変換コネクター等を使い接続すれば作業を完了できる。
その2「セパレート2ウェイスピーカー」の場合(インラインタイプ)
続いては、交換するスピーカーがツイーターとミッドウーファーが分離している「セパレート2ウェイスピーカー」である場合の配線作業の内容を説明していく。なお、「セパレート2ウェイスピーカー」には多くの場合、音楽信号の帯域分割を行うパーツである「パッシブクロスオーバーネットワーク(以下、ネットワーク)」が付属しているのだが、それにはタイプ違いがあり、そのタイプによって配線方法が少々変わってくる。
まず、リーズナブルな製品で多く見られる「インラインタイプ」のネットワークが使われている場合について説明していく。「インラインタイプ」とは、ツイーターの配線上にネットワークが組み込まれているもののことを指す。
この場合は、純正のツイーターの手前に来ている配線にネットワークともどもツイーターを接続し、ネットワークから分岐しているケーブルをミッドウーファーまで繋がっている純正配線に接続する。そしてミッドウーファーを付属の変換コネクター等を使って純正ケーブルと接続すれば、作業が完了する。
その3「セパレート2ウェイスピーカー」の場合(別体タイプ)
続いては、ネットワークが配線から分離し(別体となり)左右に1つずつ用意されているタイプの「セパレート2ウェイスピーカー」の配線作業の内容を説明していく。市販スピーカーはある程度グレードが上がると、このようにネットワークが別体タイプとなる。全体的には、そうである製品の方が多い。
その場合には以下のような要領で配線作業が実行される。ネットワークの入力端子に純正のスピーカーケーブルを接続する。その上で、ネットワークのツイーター用の出力端子からツイーターまでを配線し、ミッドウーファー用の出力端子からミッドウーファーまでを配線する。
で、そのネットワークをどこに設置するかで配線作業の内容が変わってくる。考えられる設置場所は2つある。1つはダッシュボード内のどこか(主にはグローブボックス)で、もう1つはドア内部だ。
ちなみに、ダッシュボード内にネットワークを置く場合、ミッドウーファーへの配線は純正ケーブルを活用できる。一方ドア内部に設置する場合には、ネットワークまでの配線は純正ケーブルを使い、ネットワークからツイーターまでの配線は新規に引き直すこととなる。どちらにするかは、車両の状況、ツイーターの設置場所等々、さまざまな要素を勘案して決定することとなる。
スピーカーを換えるなら、ケーブルも交換するべき?
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伝送過程での信号の質の劣化を防ぎたいなら…。
結論から言うと、スピーカー交換をする際には、できることならケーブルも交換したい。そうした方が、交換するスピーカーの性能を引き出せるようになるからだ。
ちなみに、オーディオシステムの音をより良くしようと思ったときにポイントとなるのは、「いかに信号の劣化を防げるか」だ。つまり、音楽ソースに含まれている(録音されている)情報をいかにロスなく音に変えられるかが重要となる。それを目指して使用機材が吟味され、機材の取り付け方にも工夫が凝らされる。
その観点に立つと、信号の伝送過程においても信号の劣化はできる限り防ぎたい。そのためにはケーブルの質が問題となってくる。ゆえにハイエンドカーオーディオ愛好家は、こだわってケーブルをチョイスする。
最廉価なモデルの、1グレードもしくは2グレード上のモデルが狙い目!?
ところで、市販のスピーカーケーブルはグレード違いがさまざまある。もっともリーズナブルなモデルは1mあたり200円程度だろうか。その一方で、1mあたり1万円を超える超高級品も存在している。
ちなみに1mあたり200円のものでも、純正ケーブルとの性能差は明らかにある。ただしどうせなら、そこから1ランク、2ランク上のものに手を伸ばすと、得られる満足度も大きくなる。
というのも、スピーカーもそうだが低価格の製品ほどグレード間の性能差に開きが出やすい。例えば1m200円のものと1m400円のものとでは価格は倍違う。倍も違えば、性能差も相応に開く。というわけなので低価格帯の製品をターゲットとするときには、もっともリーズナブルなものの1グレード、または2グレード上のモデルが狙い目となる。参考にしてほしい。
スピーカーケーブルの交換の仕方について
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メインユニットが市販品の場合
ここからは、スピーカーケーブルの交換の実践方法を解説していく。やるべきことはいくつかあるが、今回はメインユニットとの接続方法について解説していく。
ちなみにメインユニットを市販品に交換してある場合には、作業は比較的にイージーだ。なぜなら、メインユニットから伸びているハーネスの各配線の先端には、あらかじめ「ギボシ端子」が装着されていることがほとんどだからだ。
そうであれば、交換するケーブルの先端にも「ギボシ端子」を装着すれば、メス端子にオス端子を差し込むことでケーブルの接続作業を完了できる。
メインユニットが純正品の場合
対して、もしもメインユニットが純正品のままであったら、メインユニットとの接続作業の難易度はやや上がる。なぜなら、純正メインユニットから伸びているハーネスには「ギボシ端子」が接続されていないからだ。純正メインユニットから伸びているハーネスは基本的に、車両側のハーネスとカプラーで繋がっている。なので、各配線に「ギボシ端子」は接続されていない。ゆえに、純正ケーブルをカットして、端子を装着する作業が必要となるのだ。
さらには、どのケーブルがスピーカーケーブルなのかを見極めるのも難しい。ちなみにいうと、市販メインユニットのハーネスにはそれぞれが何のケーブルなのか印が付いている。しかし純正メインユニットのハーネスは、どれが何の配線かひと目では分かりにくい。車両の取説等を読んだりネットで検索するなりして、よく確認する必要がある。間違って他の線をカットしてしまうと、あとが面倒だ。
配線作業に必要な工具とは?
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次いでは、配線作業に必要な工具を紹介していく。主なところでは以下のような工具が必要となる。
・プラスドライバー
・内張りはずし(リムーバー)
・ニッパー
・圧着ペンチ(電工ペンチ)
・配線通し
まずプラスドライバーは、サイズ違いがいくつかあると安心だ。そして内張りはずしも、大小あると場所によって使い分けられる。ちなみに内張りはずしは、プラスチック製のものと金属製のものとがある。両方用意しておくと便利だが、プラスチック製のものの方がパネルを傷つける心配が少なく使いやすい。
そしてニッパーと圧着ペンチは、ケーブルをカットしたり端子を装着するときに必要となる。なお、ニッパーだけでもなんとかなるが、圧着ペンチがあった方が作業効率が上がる。ケーブル交換作業を今後も自分で行いたいと考えるなら、用意した方が良いだろう。
また配線通しもあると、ダッシュボードの中や手が届きにくい場所にもスムーズにケーブルを通せて便利だ。
配線作業における最大の注意点は「ショート」の防止!
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配線作業を自分で行う際の、最大の注意点についても触れておきたい。それは「ショート」だ。
「ショート」とは、プラス側の配線とマイナス側の配線とがダイレクトに繋がってしまう状況のことを指す。それが起こると、抵抗がなくなるために大量の電気が一気に流れる。そうなるとあっという間にケーブルの被膜が溶け、最悪、車両火災も起こりかねない。
というのも、車ではボディがマイナス配線の役目を果たしている。そうすることで配線を簡略化できるからだ。しかしこの仕組みゆえに「ショート」が起こりやすくもなっている。プラス側の配線がどこかで断線し導体がボディに直接触れると、いとも簡単に「ショート」が起きる。
なので、スピーカーケーブルの配線作業においても、断線の可能性を最大限排除する必要がある。例えば、シートレールのそばにケーブルを這わせるのは御法度だ。シートを動かす際にケーブルを噛んでしまいかねないからだ。
また配線作業の際には、バッテリーのマイナス側のターミナルを外した方が良い。そうしておけば作業中の「ショート」の発生を防げる。ただし、ターミナルを外す際には、車両のコンピューターの制御の都合上行わなくてはならないこともある。なので取り外す前には車両の取説をよく読み、ターミナルを外す際の注意事項も確認しよう。
ケーブル交換は、プロに任せるのがベスト!
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普段から車いじりを趣味としているドライバーなら、スピーカーケーブルの引き回し作業はそれほど難しくはないだろう。ケーブルをカットしたり端子を付ける作業はあるものの、パネル類を改造するような大掛かりな加工は基本的には必要ないからだ。
しかし、慣れていない人にとっては簡単ではない。まず各種パネル類を外す作業がハードルとなる。そして、メインユニットの裏側へのアクセスも楽ではない。さらには安全性の確保も慣れていないと不安だろう。
また、プラスとマイナスの繋ぎ間違えが起こると音楽の聴こえ方が不自然になるし、思わぬ箇所でミスがあると音が出なくなることもある。そうなると、その原因を探る作業も困難だ。精神的にもつらい作業となってくる。
というわけなので、自信がなければカーオーディオ・プロショップの門を叩こう。専門店に行けば製品の選定においてもアドバイスを受けられるし、取り付けまでばっちりサポートしてもらえる。もろもろを安心して任せられる。
まとめ
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スピーカー交換は、ただスピーカーを取り付ければ良いというものではない。ここで説明したような配線作業も必要となる。そして、配線作業にもさまざまなコツやセオリーが存在し、創意工夫も発揮すべきだ。作業は案外難しい。
とはいえ、興味があればチャレンジする価値はある。その際には製品に付属している取り扱い説明書や車両の説明書をよく読んで、自己責任のもと安全性に配慮して注意深く作業を実行しよう。
もちろん、カーオーディオ・プロショップの力を借りるのも1つの手だ。カーオーディオ製品の取り付けにおいては、カーオーディオ・プロショップという頼れる存在があることも、くれぐれもお忘れなきように。
太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。