カーオーディオ製品は、クルマに取り付けて初めて音響装置として完成する。つまり取り付け作業は、「システムを作り上げる作業」に等しい。ゆえにそこにはセオリーが多々存在していて、それにのっとって取り付け作業を実行しないと、ユニットの性能を引き出し切れない。
さて、具体的にはどのようなセオリーが存在しているのだろうか。当連載ではその1つ1つを解説しながら、カーオーディオの奥深さを紐解いていこうと試みる。
まず最初は、「スピーカーの取り付け」に関することから解説していく。スピーカーは特に、取り付け作業の巧拙が出音の質に大きく影響を与える。その理由は以下のとおりだ。
ホームオーディオ用のスピーカーを思い浮かべていただきたい。スピーカーは、ドライバーユニットが箱(エンクロージャー)に装着された状態で製品化されている。対してカーオーディオ用のスピーカーは、ドライバーユニットが“裸”の状態で売られている。つまり、その状態ではスピーカーとしての完成をみていないのだ。
ちなみに、ホームオーディオ用のスピーカーは、箱の部分にもそれなりのコストが掛けられている。材質、形状、内部構造、詰め物に至るまで、音に良かれとさまざまな工夫が凝らされている。
一方カーオーディオではドアが箱にあたるのだが、悲しいかなクルマのドアはスピーカーとして設計されてはいない。ゆえに、カーオーディオプロショップはスピーカーを取り付けるにあたり、ドア内部にさまざまな工夫を凝らす。あたかもスピーカーを作るかのように、ドア内部の音響的なコンディションを上げていくのだ。
ドア内部への施工内容を具体的に紹介していこう。真っ先に取り上げるべきはこれだ。
カーオーディオプロショップはスピーカーを取り付けるにあたり、「インナーバッフル」と呼ばれるパーツをワンオフする。これは、スピーカーの土台であり、スピーカーを上に持ち上げるためのスペーサーであり、スピーカーの振動をドアに伝えないための音響パーツでもある…。
今回はここまでとさせていただく。次回は「インナーバッフル」についてさらに詳しく解説していく。お楽しみに。