好みの音を得るためには、「スピーカーに何を使うか」が問題となる。しかしカーオーディオでは、それだけではサウンドの最終型は決定されない。セッティング次第で完成度は変わってくる。またそれを見直すことで、後から完成度を上げることも可能となる。
当短期集中連載ではそこのところに焦点を当てている。製品のポテンシャルを引き出すための“セッティング術”について、多角的に検証しようと試みている。今回はその第2回目として、ツイーターの「カスタムインストール」について考えていく。
“Aピラー”に取り付けると、サウンドステージの“高さ”を出しやすい!
早速本題に入りたい。まず“カスタムインストール”とは何なのかというと、答はズバリ「内装パネルを加工してツイーターを取り付けること」を指す。純正状態のパネルに穴を開け、取り付け、成形し、最後には生地を貼る等をして仕上げていく。このようにすることが“カスタムインストール”と呼ばれている。なお、装着する場所は“Aピラー”、もしくは“ドアミラー裏”、このどちらかとなる場合がほとんどだ。
さて、取り付ける場所によっての有利不利はあるのだろうか。最初にそれについて考えていく。まずは“Aピラー”から。
“Aピラー”に取り付けるメリットと言えば、「高さ設定の自由度が高いこと」、これが筆頭に挙がってくる。高さ設定についてはいろいろな考え方があるが、一般的にはある程度高くした方が有利だとされている。
なぜならツイーターが高い位置にあると、中低音もそれに引っ張り上げられてサウンドステージ全体が高い位置にせり上がってくる。高音と中低音が上手く一体化していることが条件にはなるが、そうであればツイーターの高さに応じて音像が上昇し、音楽が目の前から聴こえてくるようになるのだ。
また、「コントロールがしやすくなる」という利点も得られる。ある程度高い位置に取り付けると反射の影響を減らせるからだ。ダッシュボードやメーターフードに音が当たる量が減り、結果、音響的な状況がシンプル化されていくので、サウンドチューニングがしやすくなるのだ。
さらには、「サウンドステージの奥行き感を出しやすくなる」こともメリットだ。車種によっては取り付け位置が奥まるので、結果、サウンドステージの深さを表現しやすくなるとも言われている。
費用が比較的に掛かること、場合によってはミッドウーファーとの距離が離れすぎること等が不利点…。
続いては“Aピラー”に取り付ける場合のデメリットについて考えていく。まずは、“ドアミラー裏”に付けるときと比べて「製作コストが多めに掛かること」がデメリットとなる。もちろんやり方次第で差が出てくるが、“ドアミラー裏”と比べて“Aピラー”の方が加工面積が広くなる。結果、その分仕上げ用の生地の使用量も増え手間もかさむ。
また、「純正状態に戻そうとするときのコストが多めに掛かる」ことも不利点と言える。“ドアミラー裏”よりも“Aピラー”の方がパネル代が高額だからだ。
ただし実のところ、“Aピラー”のパネルは驚くほど高くはない。国産車の場合は特に、案外にリーズナブルだったりもする。この点については最初に確認しておくと良いだろう。それほど怖れることではないということが分かるはずだ。
音的なデメリットは、敢えて挙げるならば「ミッドウーファーとの距離が離れ過ぎてしまう場合もあること」だろうか。特に車格の大きなミニバン等では、取り付ける位置によってはかなり離れてしまうこともあり、遠くなるほどに音を繋げにくくなる。いわゆる“中ヌケ”という現象が起こりやすくなるのだ。“カーオーディオ・プロショップ”に仕事を頼めば、サウンドチューニングでその不利をカバーしてもらえるが、より高度なチューニング能力が必要となるのは確かだ。
対して“ドアミラー裏”はどうかと言うと…。
まず、「取り付け費用が比較的に少なくてすむこと」が利点となり、音的には「ミッドウーファーとの位置関係が遠くなりすぎないこと」が利点となる。
そしてさらには、「サウンドステージの横幅を出しやすいこと」もメリットとなる。運転席からの景色を想像してほしい。右ハンドルのクルマだったとして、ツイーターがダッシュボードの右端に付いている状態と、“ドアミラー裏”に付いている状態とをそれぞれ思い浮かべてみると…。ダッシュボードの端にあるツイーターは自分に対してほぼ正面に位置するが、“ドアミラー裏”のツイーターは位置が大きく右側に開く。この違いが、サウンドステージの横幅の表現に大きく効いてくる、というわけなのだ。
“ドアミラー裏”に装着すると、サウンドステージの最前方を手前に持ってこられる!
ところで“Aピラー”に取り付ける場合のメリット解説のところで、「サウンドステージの奥行き感を出しやすくなる」と説明したが、“ドアミラー裏”に取り付けた方が「奥行きを出しやすい」と考えるプロも多い。“ドアミラー裏”に取り付けると、ツイーターは“Aピラー”に装着した場合と比べてより前側にくる。結果、ステージの最前方を手前に持ってこられるので、その分奥行き感が出しやすくなるというわけなのだ。これもまた事実だ。ステージが近くなり、そして同時に奥側を深く表現できたりもするのだ。
最後に、ツイーターの角度についても解説しておこう。
この点についてもさまざまな考え方があるのだが、まず一般的なのは、「左右とも運転席のリスナーに正対させる」、だ。こうすることでツイーターが発する情報量をロスなく受け取れる。また、その状態から近い方のツイーターだけを少々オフセットさせる、というやり方が取られることもある。そうすることで左右のエネルギーバランスを整えることも可能となる。
または、「左右とも運転席と助手席との間あたりに向ける」という方法も割とスタンダードだ。見た目を考えたときにも、この方法はアドバンテージを発揮する。インストールデザインを左右で揃えられる(対称にできる)からだ。特に“Aピラー”に取り付ける際に、この点が重視されることは多い。
また、音的にも以下のようなメリットが得られる。中央を向けると、角度の振れ幅を左右で大体同じにできる。しかも、運転席で聴く場合と助手席で聴く場合とでも条件がほぼ同様となる。ゆえに助手席優先のチューニングもしやすくなるし、両席のリスニングコンディションを揃えたいときにも利点が得られる。
いずれにせよ角度決めは、至ってデリケートな問題となる。取り付けを依頼するショップとよく相談して、各自で最善を探っていこう。
今回はここまでとさせていただく。次回もフロントスピーカーの“セッティング術”に関する考察を続行する。お楽しみに。