世界のカーオーディオブランド各社の特長を明らかにしようと、“旗艦モデル研究”を実行している。各メーカーが培ってきた経験と技術と思想が注ぎ込まれて完成されているトップエンドモデルの成り立ちを紐解き、各社の魅力をあぶり出そうと試みている。
連載の第7回目となる当回では、ドイツ発の実力ブランド、“FLUX(フラックス)”にスポットを当てる。
ドイツ国内の主要自動車メーカーにスピーカーをOEM供給してきた実力ブランド!
“フラックス”の名前が日本のカーオーディオフリークたちの間に浸透してきたのは、比較的に最近だ。ディストリビューターの“イース・コーポレーション”が取り扱いを開始したのは2012年。日本初上陸を果たしてから今年で7年目を迎えたところだ。
しかしながら実は、“フラックス”の社史は長い。すでに50年以上の歴史を有している。ちなみに本拠は、ドイツ南部のグンデルスハイムに置いている。
なお“フラックス”は、日本においては“カー用スピーカーブランド”として認知されているが、本国ではパワーアンプとDSPもリリースし、総合カーオーディオメーカーとして知られている。しかしながら、主力はあくまでもスピーカーだ。
というのも“フラックス”は、長きにわたって自動車メーカーに向けてのスピーカーのOEM供給を事業の柱としてきた。その活動によって会社を発展させ、かつ技術を磨き込んできた。
ちなみに、供給先としてきた車体メーカーは、メルセデス-ベンツ、BMW、アウディ、フォルクスワーゲンetc.。さらには、ベントレーやランボルギーニといった“プレミアム”ブランドにも高品質なスピーカーを提供してきた。一大スピーカーブランド言って良い十二分な実績を有しているのだ。
そしていよいよコンシューマー向けのスピーカー開発にも着手するのだが、放たれた製品はヨーロッパやアジアのカーオーディオ愛好家やサウンドコンペティターたちの間でたちまち評判となる。そして日本においても、耳の肥えたカーオーディオフリークたちからの支持を集め、実力スピーカーブランドとして名声を高めてきた、というわけなのだ。
フラッグシップは『REFERENCE Series』。2機種をラインナップ!
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(写真)フラックス・RC270 ACTIVE
さて、そんな“フラックス”のフラッグシップモデルには、『REFERENCE Series』という名前が与えられている。同シリーズは2モデルでラインナップが構成されていて、1つが16.5cm3ウェイ機の『RC370 ACTIVE』(税抜価格:40万円)、もう1機種が16.5cm2ウェイ機の『RC270 ACTIVE』(税抜価格:28万円)。すっきりと以上の2機種のみの編成となっている。
なおどちらもその名称からわかるとおり、DSP等々の“アクティブ・クロスオーバー”の使用が前提とされている。つまり、パッシブクロスオーバーネットワークは同梱していない。“マルチアンプ接続”で鳴らすことが想定されたスピーカーなのである。
技術的な特長を見ていこう。まず注目すべきは振動板。ミッドレンジとミッドウーファーには、ペーパー、グラスファイバー、シルク繊維、セラミック繊維で構成された4層構造の高品位な振動板が採用されている。そして28mmツイーターは、ハンドコート仕上げが施されたシルクドームタイプ。熟練した職人による手作業の工程も経て、完成されている。
フレームにもこだわりが注がれている。ミッドレンジとミッドウーファーのそれは、高い強度と精度を誇るアルミダイキャスト製で、ツイーターも精度の高さを特長とするジュラルミン仕様となっている。
見た目的にも高級感が満点だ。ミッドレンジとミッドウーファーの振動板はいかにもスペシャリティが高そうな風合いで仕上げられていて、センターキャップ(2ウェイ機ではフェイズプラグ)はカッパーカラー。なかなかに品格がある。そしてツイーターのフレーム & グリルも質感が良好でかつデザインがシャープ。手にしたときの満足度の高い、手応えある一品に仕上げられている。
2ndグレード『MAESTRO COMPETITION Series』は、旗艦機の技術を踏襲して完成!
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(写真左)フラックス・MC COMP371 ACTIVE、(写真右)フラックス・MC COMP271 ACTIVE
ところで、2ndグレードとなる『MAESTRO COMPETITION Series』もなかなかのハイグレード仕様だ。税抜価格は3ウェイ機『MC COMP371 ACTIVE』で25万円、2ウェイ機『MC COMP271 ACTIVE』が17万円となっている。
当シリーズはまさしく『REFERENCE Series』の技術と思想が落とし込まれて完成されている。例えば、ミッドレンジとミッドウーファーの振動板は、ペーパー、グラスファイバー、シルク繊維の3層構造。1層少ないものの基本的な作りは上級機譲りだ。センターキャップ(当シリーズでも2ウェイ機はフェイズプラグ)に関してはカラーも同一でほぼ同様な仕上がり。
筐体もデザイン・構造が踏襲されていて、ツイーターの振動板は当シリーズでも、ハンドコートフィニッシュされたシルクドームタイプとなっている。そして同じくパッシブクロスオーバーネットワークを付属せず、“マルチアンプ接続”で鳴らすことが前提とされている。当シリーズも、ハイエンドスピーカーと言うにふさわしい完成度の高さを誇る逸品だ。
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(写真左)フラックス・FS360、(写真右)フラックス・FS260
ちなみに“フラックス”は、エントリー機に至るまで製品編成が旗艦機と同一だ。エントリーグレードの『SPORTY Series』も16.5cm3ウェイ機『FS360』(税抜価格:7万円)と同2ウェイ機『FS260』(税抜価格:4万5000円)の2機種展開となっている。ともに10万円を大きく割り込むお手頃モデルだが、その価格帯にも3ウェイ機を並べるあたりがなんとも“フラックス”らしい。気軽に楽しもうとするユーザーにも“本格派”な製品を提供しようとする姿勢の表れだろう。同社はこれまでも常に、低価格な製品にも3ウェイ機を用意し続けてきた。そのスタンスは今も変えられてはいない。
“フラックス”の各製品は、豊潤でコクのある質感豊かな音色が持ち味だ。しかしながらクセはなく、至ってナチュラルな正統的Hi-Fiサウンドを聴かせてくれる。安心して使える音質系ブランドを探しているのなら、“フラックス”のチェックも欠かせない。要注目♪