チューニングと言えば「速くなる」ためのもの。しかし、クルマを壊さないためのチューニングもある。その代表的なものがチューニングの初歩とも言える、マフラー交換。なぜマフラー交換がクルマの保護になるのか。
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マフラー交換をすると、排気効率がよくなって、シリンダー内部から排気ガスが効率よく排出される。綺麗に排気ガスが抜けると、その分新たな空気とガソリンがスムーズに入るので出力が向上する。これがマフラー交換によるパワーアップの理屈だ。
ターボ車になるとエンジンの直後にはターボチャージャーが存在する。排気ガスの勢いでタービンを回し、その回った力でエンジンに新たな空気を押し込むのがターボ車の仕組み。燃焼室から出た排気ガスは、すぐにタービンにぶつかり、その後に排気パイプを通って排気される。スポーツ触媒へ交換や、マフラー交換をすると、このタービンのあとの部分の排気効率が良くなる。ここで抜けがよくなるとタービンはスムーズに回りやすくなる。いわゆる、排圧が落ちるという。
タービンが回りやすくなるので、もっとエンジンには空気が押し込まれるのでもっとパワーが出る。ターボ車の排気チューンは効果が大きいのである。そして、タービンが回りやすくなるとパワーアップもそうだが、ターボ自体の寿命が伸びるのである。
ターボはいつも苦しい状態にある。エンジンから出た高温の排気ガスの勢いを受け止め、その先には網状の触媒が排気ガスを通り抜けにくくし、さらに先では隔壁構造の純正マフラーが排気抵抗を増やしている。勢いよく排気ガスを受けても、その先も詰まっている。中間管理職のような状態で板挟みになっているのだ。
ところが排気ガスが効率よく通るようになると、エンジンから勢いよく受けた排気ガスでタービンを回せば、その先はスルスルと排気ガスが抜けていけるので、一気に負担は減る。タービンへの負荷を減らせることができるのである。中間管理職の部下が、急に言うことを聞いてくれるようになったと思えばいいだろうか(笑)。グッと負担が減る想像がしていただけるかと思う。
タービンに近いほど効くのでスポーツ触媒は効果大!!
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タービンはエンジンよりもへたりやすい。ブレードから本体全体が真っ赤になるほどの高温にさらされ、回転数はエンジンの10倍にもなり、超高速でブレードは回転する。一気に壊れなくても徐々にパワーが落ちていき、新品にすると驚くほどパワーが蘇るのがタービンなのである。排気系のチューニングは、タービンの寿命を伸ばすことができるのだ。
とくにタービンに近い部分のほうが、排気チューンの効果が高い。触媒は温度の高い排気ガスを受けて、その温度を利用して貴金属を使って排気ガスを綺麗にするので、タービンのすぐ近くにマウントされている、なので、触媒を効率の良いものにするのがタービン保護には一番効果的。出力アップも同じようにタービンに近いほうが効く。
極端な話、触媒をスポーツ触媒にすれば、その先がノーマルマフラーでもパワーアップは望めるし、タービン保護の効果も得られる。もちろん、その先のマフラーも効率の良いものにすれば、もっとタービン保護になり、パワーアップにも貢献してくれる。
現在は消音装置に関する事前認証があり、マフラーとセンターパイプをセットで購入すれば車検が通るけど、別々に購入すると車検NGなど、細かいルールがある。触媒は消音装置ではないが、車種によっては消音装置と一体になっている場合などもあるので、あとから買い足せるものなのか、最初に全部購入する必要があるかなどはプロショップやパーツ量販店などで確認してから購入してもらいたい。
ターボ車がメインとなるが、NA車でも排気系をスムーズにしてエンジンに悪影響はない。気をつけるべきは、触媒交換やマフラー交換などで大幅に排気効率がよくなると、エンジンECUの書き換えなどの調整が必要になる場合がある。車種によってはエンジンチェックランプが点灯することもあるので、プロに従ってECUの書き換えや追加コンピュータの取り付けなど、効率アップに対応した対策を施したい。そうなれば、さらにエンジンと排気系のポテンシャルを引き出し、もっと走って楽しいクルマになる。