ファッションにもチューニングも有効なホイールナット交換。さまざまな材質と形状があり、それぞれ向いているステージがある。一歩間違えれば危険も伴う部分だけにきちんとした知識で選ぶようにしたい。
ホイールナットの交換はドレスアップとしてオススメのパーツ。ノーマルではシルバーの袋ナットと呼ばれるドングリのようなカタチが付いていることが多いが、それを細身のものにするだけでも足元は引き締まる。長さや色も選ぶことができるし、材質も選択できる。チューニングパーツとしても機能する。
間違いないのはクロモリ製ナット
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材質はノーマル品はほぼステンレス製。アフター品では主にクロモリとアルミ製がある。クロモリ製はレースなどでも使われるもので、決して軽くはないがタフで、何度使われても大丈夫。長く使える信頼性の高さがある。
対するアルミ製はアルマイト処理でカラフルにされているものが多い。ドレスアップにはピッタリだ。ただ素材としてアルミ製は柔らかいのでサーキット走行などは不可。スポーツ走行、車重の重い車などにもオススメしにくい。また、素材が柔らかいのでトルクレンチで締めすぎないように気をつけないと、ネジ山にトラブルを抱えやすい。逆に言えば、スポーツ走行するわけではなく、きちんと管理するならアルミ製もありではある。特にどうしてもカラフルな色にしたいというのでなければ、まずはクロモリ製がオススメ。
高価にはなるがチタン製もある。クロモリほどではないが、ある程度素材としての強さがあり、圧倒的に軽量。少しでも軽く仕上げたいチューニングカーでは採用されることも多い。
選ぶべきは袋ナットか貫通ナットか
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ノーマルは袋ナットと呼ばれるもので、ナットの先が行き止まりになっているタイプが多い。対する貫通ナットはナットのあっち側が見えるタイプ。袋ナットの方が水やゴミが入らないので良いという派もいるし、貫通ナットの方がゴミが入っても排出できるのでこっちが良いという派もいる。
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これは好みでもあるが、気をつけたいのがスタッドボルトが長いクルマ。袋ナットだとホイールを固定する前に、スタッドボルトの先端が袋ナットの底にぶつかってしまい、きちんとホイールを固定できない場合もある。スペーサーを入れるためにロングハブボルトに交換しているときなどは、貫通ナットを使ったほうが安全だ。
安全性を確保するためにしっかりとトルク管理をして使う
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締め付ける力はきちんとトルク管理したい。十字レンチでギューギューと締めたら、男性がやればほぼ間違いなくオーバートルク。ホイールナットを締めるとスタッドボルトが引っ張られて、このスタッドボルトが戻ろうとする力でホイールは固定されている。強く締めすぎるとスタッドボルト自体が伸びてしまう。あまりに伸びてしまうとボルトは折れてしまう。
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それを防ぐために適正なトルクで締めることが大切。自動車メーカーによるが10~11kgmくらいが適正トルク。なのでトルクレンチを使って締めすぎないようにすることが大切。締め足りないのは問題だが、締めすぎも大問題だ。
トルクレンチは適正トルクになるとカチンと音がしてそれを知らせてくれるが、これを活用できていない人も多い。素早くカチカチン!! と締めたらたいていは締めすぎている。もっとゆっくりじわっと締めていって、カチン! と1回音がすればそれで適正トルクが掛かっているのだ。
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トルクレンチはリーズナブルなものなら3000円くらいから購入できる。精度やその精度の維持は高い製品にはかなわないが、そこまで大幅に狂うものではないので保険として持っておきたい工具。もし、スタッドレスとノーマルタイヤの履き替えを十字レンチでガシガシ締めているというなら、ぜひ購入していただきたい工具第1位がトルクレンチだ。
ホイールを頻繁に付け外しするならグリスを塗る
自動車メーカーの取扱説明書では、スタッドボルトは潤滑不要となっていることが多い。しかし、頻繁に付け外しするレースでの世界では、カジりと摩耗防止に薄くグリスを付けることが多い。自身でタイヤのつけ外しが多いとか、降雪地域でスタッドボルトが錆やすいならグリスを塗るのもあり。モリブデン系や、スレッドコンパウンドと呼ばれるもので、スタッドボルトにわずかに薄く付けば十分。
気をつけたいのがホイールナットのテーパー部分には絶対にグリスが付かないようにすること。このテーパー部分はホイールと摩擦して固定している。ここが無潤滑で擦れるときの抵抗も含めて、ホイール締め付けトルクが指定されている。
テーパー部分まで潤滑されてしまうと、トルクレンチで10kgmで締め付けても、その3倍以上の力が締まってしまい、スタッドボルト折れの原因となる。グリスの使い方にも気を配ってもらいたい。