先代のスズキ『スイフトスポーツ』は歴史に残る名車。存分に遊べるパッケージと維持費の安さ、クルマとしてのタフさはすべて特筆レベル。これから遊ぶオススメのパッケージを松竹梅でご紹介します。
◆1600cc+6MTのFFスポーツという実用的パッケージ
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スイフトスポーツは初代がHT81Sというモデル。軽自動車の『kei』をベースに普通車に仕立てたスイフトのスポーツバージョン。1500ccエンジンに5MTを組み合わせたパッケージだった。車重は930kg。軽いボディに対して大きなエンジンで、パンチのある走りは人気を獲得した。
そこから、普通車ボディのスイフトをベースに1600cc化されたのがZC31S。5MTと4ATのミッションが組み合わせられた。ボディ剛性が素晴らしく、欧州車並みの走りの質感を実現。そのZC31Sも名車だったが、それをスタイルも中身もそのまま正常進化させたのがZC32Sだ。エンジンはほぼ同じだが、中低速トルクを向上。ミッションは待望の6MT化された。2ペダル車はCVTが採用された。ボディはさらに強くなり、ハッチバックにありがちなリア回りの弱さも皆無。ドライビングポジションも31Sはややハンドルが遠い、いわゆるコンパクトカー的なものだったがテレスコピック調整が付き、そこそこ満足できるポジションが取れるようになった。
そして、とにかく豪華装備だということ。グレード展開はなく、マニュアルかCVTしか種類がない。全車がフォグランプ、クルーズコントロール、オートエアコン、キーレスエントリーとひと通り付いている。では、どうしたらスイフトスポーツで遊べるのか。サーキットでのスポーツ走行まで含む、走って遊ぶ方法を段階別に解説する。
<初級編“梅”>ブレーキパッド+追加メーターさえあればOK
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走って楽しむのに必要なのはブレーキパッドくらい。元気なエンジンとクセのない足まわりでワインディングも高速道路も、サーキットまで存分に楽しめる。サーキットを走るなら気にしておきたいのがエンジンの温度。水温はかなりのキャパシティがあり、そうそう上がることはないが、100度を超えたらクーリングをしたい。
気をつけるべきはエンジンオイルの温度。かなり油温が上がりやすい車種で、夏場に連続走行すると130度を超えることも珍しくない。ゆくゆくはオイルクーラーの装着も考えたいが、とりあえず追加メーターで確認。125度くらいになったらクーリング走行をすれば問題はない。もっとも、オイルクーラーがないとクーリングしてもすぐに温度は下がらないので、ミニサーキットで連続走行は10分くらいまでにしておくのが現実的。普段乗り+高速道路程度ならオイルクーラーは不要だ。
<中級編“竹”>ECUチューン+シート+オイルクーラー
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もうちょっと走りを楽しむならオススメはECUチューン。10万円程度でパワーアップ・トルクアップに、アクセルレスポンスも良くなる。今どきのECU書き換えは、排ガス規制に合わせて絞られたパワーを開放し、アクセルペダルに対する反応を最適化したりするもの。昔のようにパワーと引き換えに寿命を失うようなものではない。ECU書き換えで10万kmや20万km走行するのは普通なので、ライフについては心配なし。
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シートは好みだが、純正がかなり腰高でホールド性もいまいちなので、スポーツシートにすると乗りやすくなる。合わせてステアリングダウンスペーサーで、ステアリング位置も下げるとさらに乗りやすい。
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サーキット走行を時折するなら、オイルクーラーもオススメ。クーリング走行までの時間をグッと伸ばせる。クーリング不要でも走れるようになってしまうが、ブレーキパッドへの負荷はあるので、そこそこでクーリング走行は入れたい。それくらい油温は安定するようになる。
<上級編“松”>LSD+車高調で足回りを強化する
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LSDはアクセルを踏んだとき、サーキットでは大きくロールしているのでイン側タイヤから荷重が抜けて空転しやすい、純正デファレンシャル機構だと、空転したタイヤに駆動力がすべて言ってしまうため加速が鈍くなる。同時に空転したタイヤがものすごい勢いで減ってしまう。
そこでLSDは左右同じように駆動力を与えてくれる部品。昔はLSDを組むと「曲がらない」「バキバキと音がする」と言われたがそれらはすべて過去の話。現在、各メーカーできちんとした商品で指定オイルを使っていれば、曲がらないことも音がバキバキすることもまずない。
FF車は1ウェイという加速時のみ効く方式が定番と言われたが、これも各メーカー滑らかに作動するようになっているので、減速側でも作動する2ウェイでもまったく問題ない。各社のオススメスペックでOKだ。
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車高調を入れるとグッと走りはスポーティになるし、車高を下げることもできる。安いものは10万円以下から、高いものは30万円くらいまで。もちろん高いものの方が走りも乗り心地も良い傾向にあるが、とりあえず国内サポートのあるメーカー品を選べば大丈夫。きちんとした取り付け寸法の指定や、トラブル時へのアフターケアもある。
これだけあれば十分に楽しめる。そして、ZC32Sは先代からの弱点のブラッシュアップを受けているのでほとんど弱点がない。度重なるサーキット走行をするとフロントブレーキキャリパーが開いてしまって交換するとフィーリングが直るというくらいで、壊れるとかは皆無。
しかも1050kgという車重のおかげでタイヤが減らない。パッドも減らない。現行型のZC33Sに比べると、タイヤもパッドも2倍くらいは使えるイメージ。ランニングコストが極めて抑えられるので、ドライビングの練習やとにかくたくさん走りたい人にオススメの1台だ。