要は同じ車名のクルマの中でも、仕様が違えば各々の魅力の部分も異なるということだと思う……としつつ報告すれば、今回、商品改良を受けた『CX-60』の中で、(SUVの本筋かどうかは別にして)まず身体に馴染んだのがRWD(FR)モデルだった。
試乗した個体は「XD L Package」。ディーゼルエンジン搭載車で、車両重量は同仕様の4WDに対して50kgほど軽い1820kg。これに「SKYACTIVE-D 3.3」と呼ばれる3.3リットルの6気筒ディーゼルターボを搭載、8速ATが組み合わせられる。
スペックは最高出力170kW(213ps)/500Nm(51.0kgf・m)で、動力性能の不足はまったくない。WLTCモード燃費は18.4km/リットル。

で、走りの部分にフォーカスすると、言葉で表現するとスッキリとした走りっぷりが味わえるクルマだった。とくにちょっとしたワインディングに入った際のクルマの素直な挙動としなやかな身のこなし、ステアリングの切る/戻すの自然なタッチは、SUVであるCX-60の車重と重心高を忘れさせるほど。
CX-60は登場時から乗り心地の面でネガな声もあり、開発エンジニアもその“トガり具合”は認めるところで、今回の改良ではそのあたりの手当てをしたのだそう。確かに低速でも乗り心地がよりスムースでフラットになったことは実感する。
とはいえスポーティな走りを決して捨てたわけではなく、やや大柄なSUVのこのCX-60でも気持ちのいいドライブを味わわせてくれるところに、マツダの開発エンジニアの意思(意地?)を感じる。

それとパワートレインでは、トルコンレス8速ATのマナーが洗練され、クラッチの制御がより緻密になったのも実感するところ。とくに発進時のスムースさが増し、微震動が気にならなくなった。
また電動パワーステアリングも、直前のモデルに対してアシスト量そのものと、走行状態とステアリング操作に対してのアシストの制御が適正化され、前述の走行中だけでなく、パーキングスピードでも重くなくスムースな感触でステアリングの操作ができるようになった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。