ライトウエイトスポーツカーとして確固たる地位を築いているMAZDA『ロードスター』は、軽快な走りと操る楽しみを感じさせてくれるが、そこへアフターマーケットで新たな個性がプラスされた2メーカーのデモカーを走らせてその魅力をレビューしていく。
見た目も走りも進化! BLITZが手掛けるNDロードスターの最適解とは

BLITZが提案するのはNDロードスターを街乗りで楽しむこと。車種ごとに明確なコンセプトを持つのがBLITZのものづくりだが、とくにNDにおいては街乗りでの楽しさに重点を置く。

まずはルックス。後期型は全車レーダーセンサー装備になったことでフルバンパーへの交換が不可。そこでアドオンできるタイプのエアロパーツを開発。フロントバンパーに追加することで一気にスポーティさと見た目の低さを演出。サイドステップ、リアウイングはMC前と共通。リアディフューザーはこれまで4本出しマフラー用だったが、2本出しマフラー用が登場。ウイングは純正ではトランクに配置されているハイマウントストップランプをウイング内に移設。純正ランプ部分につけるカバーまで付属する手の込みようで、あたかも純正ウイングのようなまとまり感を持つ。
パワー系ではフルチタン製のNUR-SPEC F-Tiを装着。オーバーハングが3.7kgも軽くなる効果があり、もちろん排気効率もアップ。後述するがテールピースのみの交換とは思えない効果を持ち、26万4000円という価格もチタン製としてはバリューなプライスだ。
そして、足まわりは車高調のZZ-Rと、遠隔自動減衰力調整機構DSC-PLUSを組み合わせる。サスペンションはフロント5kg/mm リア2.5kg/mm。前後ともにアッパーマウントは強化ゴム。いずれも街乗りでの快適性を強く意識した味付け。だが、減衰力調整によってキャラクターの変化が可能で、ロードスターらしい大きくゆったりした動きから、キビキビとした味付けまで可能だという。
マフラー効果が絶大! トルク感と迫力あるサウンドが心を揺さぶる

今回は埼玉県の本庄サーキットにて試乗。全開走行とワインディングや街乗りを意識した走行を行った。取材車両のグレードはRS。タイヤはDIREZZA ZⅢ 215/40R17を前後に装着している。走り出してすぐに感じるのは加速のトルク感。マフラーの効果で明らかにトルク感が増し、加速が力強くなっている。音も厚みのあるものになっていて迫力も十分。加速が楽しく演出されている。
それに合わせたかのように前後に装着されたタワーバーが効果を発揮し、全体にボディの重厚感もアップ。ロードスターの軽快感はそのままに、ボディが心強くなっていてスポーツラジアルタイヤのグリップも受け止めてくれる。決してロードスターのキャラクターを損なうような重厚感ではなく、頼もしさがアップといった具合。

サスペンションはしなやかに路面を捉える。32段調整の減衰力を締めていくとサーキットでの素早いブレーキにタイムラグなく対応してストロークしていく。このときでフロント12段戻し、リア10段戻し。そこから前後20段戻しまで緩めていくとしなやかにバランスしていく。サーキットでもストリートでも楽しめる。さらにフロントを25段、リアを30段まで緩めていくと、ロードスターらしいボディ全体をロールさせ、ピッチングさせて曲がっていくようなフィーリングになる。
ここまで来るとサーキットレベルのブレーキングをすると、ボディが沈むのが速すぎてややコントロールしづらい。ブレーキ自体はフロントにオリジナルキャリパーが備わるが、効きは絶妙で扱いやすい。減衰力が弱まったことでボディの動きが速くなっているのだ。しかし、街乗りでフワッと乗るには実に快適。そして、そのフィールドに合わせて室内から減衰力を調整できるのがDSC-PLUSの魅力。

また、減衰力調整によって適切にキャラクターが変わる変化があるのもポイント。減衰力調整は欲しいポイントではないところが変わってしまうこともあるが、ZZ-Rの場合はそこが絶妙。幅広いフィールドに合わせて調整できるポテンシャルがある。コンセプト通り、ストリートで楽しめるNDロードスターに仕上がっている。
BLITZのMAZDA ロードスターのパーツ詳細情報はこちらこれが理想の制動力!ENDLESSが手掛けるNDロードスター用ブレーキの真髄

ENDLESSはブレーキ&サスペンションメーカー。新たに導入したデモカーのNDロードスター 990Sで、その軽快感を活かした味付けを意識してパーツを開発している。

キャリパーはこれまでも鍛造2ピースキャリパーのチビ6があったが、今回鍛造モノブロックキャリパーのMONO4でND用セットを開発。ローター径は新設計のφ300mmで、MONO4に組み合わせられるローターでもっとも小径なもの。ローター径を大きくすればそれだけブレーキのキャパシティがアップして効きも耐熱性も上がる。しかし軽量なロードスターの場合、効きが良すぎるとコントロールしにくくなりがち。また、純正の17インチホイールが装着できないなんてことにもなりかねない。そこであえてできるだけ小さなローター径にこだわって開発したという。
組み合わせるパッドはストリート&スポーツの最新作であるSR01。ロースチール材がベースで街乗りをメインにある程度のスポーツ走行まで対応できるモデルで、扱いやすい特性が特徴。ND用のローター径と合わせて、こちらも絶妙な効きを目指して組み合わせている。
サスペンションはスタビレスの990S用に今回作った専用味付け。ラインアップでいうと「ファンクション.com」というモデルであり、いわゆるセミオーダーメイドモデル。要望や使用するフィールドに合わせて1台ずつバネレートの選定から、減衰力の設計まで行うもの。オプションパーツの有無にもよるが、基本的に30万円前後でオーダーでき、1本ずつ長野県佐久市の本社工場で組み立てて出荷されるオートクチュールモデルだ。
しなやかに動くサスペンションと操作しやすい絶妙なブレーキに感動!

今回は埼玉県の本庄サーキットでインプレッション。タイヤは205/40R17サイズのPOTENZA アドレナリンRE004。ハイグリップラジアルではなくセカンドラジアルに分類されるタイヤであるが、ロードスターのパーティレースシリーズの指定タイヤにされるなど、スポーツ走行にもマッチ。高すぎないグリップが扱いやすいキャラクターでもある。
コースインする前から感じられるのが、極めてしなやかにストロークする感触。ノーマルサスのような大きなストローク感。それでいてハイクオリティなサスペンション特有の抵抗感の少ない動きが感じられる。動き始めからロールしていった奥まで同じようにスムーズにストロークしていく。車高は下がっていてストローク量自体はノーマルよりも短くなっているはずだが、それを感じさせない。
タイヤのグリップが高すぎないので、無理な運転をすればアンダーステアやオーバーステアが現れるが、上手くロールとピッチングを使って走らせると高い次元でコーナリングできる。990Sだけにオープンデフでリアがスライドした先のコントロール領域がなく、自動的に駆動力が抜けてスライドが収まってしまうのが残念だが、しなやかな足がタイヤを高い次元で路面に押し付けてくれるのは確認できた。

そして、絶妙なのがブレーキ。ペダルタッチは剛性感が高いモノブロックキャリパーらしいもの。フルブレーキをしようとガツンと踏んでみると、パッドが噛みついてABSがバシバシと……入らない!極めてコントロール性が高く、わずかにABSを作動させたり、緩めたりが簡単にできる。短いストロークのなかでの扱いやすさが抜群。しかも、タイヤはRE004でグリップが高すぎずにABSは入りやすい。しかし、そこでのグリップ限界ギリギリの領域を簡単に調節できるのは貴重な体験。それほどまでにこのキャリパーとローター、そしてパッドの組み合わせは秀逸。普段乗りを想定して走ってもブレーキは極めてコントロールしやすい。信号に向かって止まるときにも毎回思ったとおりにストレスなく止めることができる。それはすなわち毎回ブレーキングが楽しくなるということ。ブレーキチューンは飛ばさなくても、いつでも楽しむことができるオススメチューニングのひとつ。ロードスターの楽しさをブレーキによってさらに引き出すことに成功している。
ENDLESSのMAZDA ロードスターのパーツ詳細情報はこちら