カーオーディオならではの楽しみどころの1つとなっている「サウンドチューニング」について、そのノウハウの1つ1つを掘り下げて解説している当コーナー。現在は「ユニットタイプごとの調整機能の傾向分析」と題し、最新機種の能力の傾向を考察している。
今週も引き続き、「単体DSP」についての解説をお贈りしていく。
ところで「単体DSP」は、純正メインユニットが取り外せない場合に、純正メインユニットと本格カーオーディオシステムとの共存を実現させる役割も果たすということを、先週の記事内でご説明させていただいたのだが、今週はその部分についてさらに踏み込んでいこうと思う。
なお、「単体DSP」が多彩にリリースされるようになった背景には、純正メインユニットを外せないクルマが増えてきたということも、一因として存在している。
取り外しができない純正メインユニットは、市販カーオーディオユニットを使用する前提に立っていないので、外部機器用の音声出力を装備していない。しかしながら、純正メインユニットもソースユニットとして使用しながら本格カーオーディオシステムを組もうとすると、純正メインユニットの音声は、スピーカー出力(純正オーディオ内部のパワーアンプで増幅された後の音楽信号)を取り込むしかない。なのでほとんどの「単体DSP」は、それを可能とするために、“ハイレベルインプット”を備えているのだが…。
しかしながら高機能な「単体DSP」においては、単に“スピーカーレベル入力”機能を備えているだけでなく、“合成機能(ミックス機能もしくはサミング機能)”までが装備されていることが多い。
さて、この“合成機能”とは何なのかと言うと…。
一部の車種では、複雑なカーオーディオシステムを搭載していることがある。ハイエンドカーオーディオでは、“マルチアンプシステム”が組まれることが多いのだが、純正オーディオでも“マルチアンプシステム”が構成されていることがあるのだ。そのようなケースでは、システムの中でトゥイーター用、ミッドウーファー用等々に、音楽信号の帯域分割が行われていて、各スピーカーのところには、帯域分割が終わった信号が届けられている。
そのようなシステムのスピーカー出力を取り込もうとする場合には、例えばミッドウーファーの出力だけを取り込んでも、高域の信号が欠落してしまう。であるので、帯域分割されたそれぞれをすべて入力して、そしてそれを「単体DSP」内部で“フルレンジ”の信号に合成する必要がある。それを可能とする機能が、“合成機能”、なのである。
入力できるch数については、6chタイプ、8chタイプ等の違いはあるが、高機能な「単体DSP」の多くは“合成機能”までも備え、純正オーディオとの共存を果たすための準備を万端に整えている、というわけなのだ。
今週はここまでとさせていただく。次週も引き続き、「単体DSP」の調整機能分析を継続する。お楽しみに。