カーオーディオには分かりづらい部分がさまざまある。ゆえに、初心者を遠ざけがちだ。当連載はそのような傾向を打破すべく、ビギナーが抱く「素朴な疑問」の解消を目指して展開している。今回からは新たな章に突入し、「プロセッサー」について解説していく。
「プロセッサー」とは、音楽信号を加工処理する装置!
さて、カーオーディオでは「プロセッサー」と呼ばれるユニットがシステムに組み込まれることが多い。それはなぜなのか…。今回はそこのところを明らかにしていく。
ところで「プロセッサー」という言葉には、「処理や加工を行う装置」という意味がある。例えば「フードプロセッサー」なる機械があり、これは野菜や肉を細かく切り刻むための道具だ。
で、カーオーディオにおいての「プロセッサー」とは、音楽信号の処理や加工を行う装置だ。そしてタイプ違いがさまざまある。
まず、大きくは2タイプに分類できる。1つが「アナログタイプ」で、もう1つが「デジタルタイプ」だ。前者はアナログ状態の音楽信号を処理するもので、後者はデジタル状態の音楽信号を処理する機械だ。なお前者は、できることが限定的な場合も多い。用途に応じたさまざまなモデルが用意されている。対してデジタルタイプの「プロセッサー」は、複数の機能を搭載した総合的なモデルである場合が多い。
ちなみに使われる頻度が高いのは、デジタルタイプの方だ。その理由はシンプルだ。デジタルタイプの「プロセッサー」の方が使い勝手が良いからだ。搭載されている機能の種類が多く、各機能ともよりきめ細かく調整できる。
なお、デジタルタイプの「プロセッサー」にもタイプ違いがある。できることは大きくは違わないのだが、様式違いが主には3つある。1つは「メインユニットに内蔵されているタイプ」で、2つ目は「パワーアンプを内蔵した外付けタイプ」、3つ目は「パワーアンプを内蔵しない外付けタイプ」、この3つだ。
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「プロセッサー」があれば、音響的な不利要因への対処が可能に!
続いては、カーオーディオにおいて「プロセッサー」が用いられることが多いその理由を説明していこう。ちなみにいうと、ホームオーディオでは、カーオーディオほど「プロセッサー」は使われていない。対してカーオーディオでは本格的なシステムが組まれる場合、かなりの確率で用いられる。その理由は至ってシンプルだ。「音楽信号を制御する必要性が高いから」だ。
そうである理由は以下のとおりだ。車室内は好きな音楽を誰にはばかることなく大音量で楽しめるので、この点においてはリスニングルームとしての適正が高い。しかし、音響的なコンディションが良いとは言い難い。不利要因がいくつかあるのだ。それは主には3つある。1つは「狭いこと」、2つ目は「リスニングポジションが左右のどちらかに片寄ること」、3つ目は「スピーカーの取り付け条件がクルマによって異なること」、この3点だ。
これらがどのような弊害を生むのかを説明していこう。まずは「狭いこと」について。車内は狭いので、スピーカーから放たれた音が幾重にも反射する。そうすると、周波数特性の乱れが起こる。平行面の間を行ったり来たりする現象が少なからず起き、特定の周波数の音だけが増幅したり減衰したりするのだ。
しかし「プロセッサー」を用いれば、これへの対処が可能となる。搭載されている「イコライザー」という機能にて、増幅した音を抑え込んだり減衰した音を持ち上げたりして、特性の乱れをフラットな状態へと近づけられるのだ。

「プロセッサー」を使うと、リスニングポジションの擬似的な移動が可能に!?
次いでは「リスニングポジションが左右のどちらかに片寄ること」によってもたらされる弊害について説明する。まず、ステレオとは何かを思い起こしてほしい。ステレオとは、音楽を左右のchで録音しそれを左右のスピーカーで再生することで演奏を立体的に再現しようとするものだ。で、この仕組みを成り立たせるためには、左右のスピーカーから等距離の場所に身を置く必要がある。左右のスピーカーから放たれる音をバランス良く聴きたいからだ。
しかしカーオーディオではそれが叶わない。でも「プロセッサー」に搭載されている「タイムアライメント」と呼ばれる機能を使えば対処できる。当機能を運用すると、近くにあるスピーカーの発音タイミングを遅らせられるので、すべてのスピーカーから発せられる音の到達タイミングを揃えられる。
そしてもう1つ、「スピーカーの取り付け条件がクルマによって異なること」によって引き起こされる弊害は以下のとおりだ。カーオーディオでは、車種ごとのインテリアの状況によって、さらにはオーナーの好みによってスピーカーの取り付け方が変わってくる。
なので、セパレート2ウェイのようなマルチウェイスピーカーを使う場合、ツイーターとミッドウーファー間の音楽信号の分割のさせ方も、ベストな値が都度変わってくる。例えばミニバンのようにツイーターとミッドウーファーの位置が離れ過ぎる場合には、帯域分割の境目付近の音を厚めにした方が良かったり、というような微調整が必要となってくる。
で「プロセッサー」を導入すると、これに搭載されている「クロスオーバー」という機能が使えるようになるので、都度、帯域分割のさせ方を変更できる。取り付け条件に即したベストな設定を模索できるのだ。
このように「プロセッサー」があると、さまざまな音響的な不利要因を改善可能となるのだ。
今回は以上だ。これに引き続いて次回は、「プロセッサー」にはタイプ違いがあるその理由の解説を行う。お楽しみに。
太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。