ホイールアライメントとはタイヤがどんな向きで取り付けられているかということ。タイヤはその向きや角度を微調整できるようになっていて、それによってハンドルセンターを調整したり、直進性を高めたりができる。主なアライメントの数値としてはトーとキャンバーがある。
トーはクルマを上から見た時のタイヤの角度のこと。進行方向が狭くなっている内股状態をトーインと呼ぶ。逆に進行方向が広がっているガニ股状態をトーアウトと呼んでいる。
キャンバーはクルマを正面から見た時のタイヤの垂直方向の角度のこと。両タイヤともに車両側に倒れている場合ネガティブキャンバーと呼ぶ。逆にタイヤが外側に倒れていることをポジティブキャンバーと呼ぶが現代のクルマではそうそう見られない。T型フォードのようなクラッシクカーでなければまず見られないのがポジティブキャンバーだ。
◆キャンバー角は0が正解って事で合っているのか?
まっすぐ走るだけならキャンバー角は0。トーもインでもアウトでもなく0にしておくのが最も抵抗が少なく、燃費も良い。しかし、クルマは曲がらなくてはいけないのでそうもいかなくなる。
普段乗りを前提にしてもある程度コーナリングを考えれば、多少はネガティブキャンバー角を付けたほうが、ボディがロールした際にタイヤの接地面積を活用することができる。トーもわずかにトーインにしておくと、直進安定性が高まり、ハンドルの切り始めの反応も良いのでクルマのレスポンスが良いと感じやすい。
そういった特性はあるが、大前提としてトーやキャンバーは自動車メーカーが定めた推奨数値がある。ある程度数値に幅はあるが、トーは0からイン30'(30分)、キャンバーはネガティブ1°から1°30'などと決められているのだ。まずはこの範囲内にするのが大前提。
クルマは走行していると徐々にサスペンションアームのブッシュが潰れたり痩せてしまったりもする。サブフレームごと位置がズレたりもするし、タイヤをぶつけたりするとアームやタイロッドが微妙に曲がってしまうこともある。アームの調整位置が動いてしまうこともある。それらの要因でアライメントは徐々にズレてしまう。
ズレてしまうとハンドルセンターがおかしいとか、ハンドル位置はセンターだけど手を離すと曲がっていってしまうとかそういった症状が起きる。気が付かないうちにタイヤが内側だけや外側だけ減ったり、左右のタイヤどちらかだけが減ってしまうこともある。
そういった症状を直すためでもあるし、予防するためにも定期的にアライメントチェックと調整をしておきたい。まさに人間で言うところの整体で、カラダの各部の位置を正しい位置に戻すように、トーやキャンバーを正しい数値にすることでまっすぐ走り、タイヤの摩耗も均一にすることができるのだ。
アライメントはこの推奨数値の中である程度味付けを変えることができる。例えば、フロントのトーをややアウト気味にしておくことで、ハンドルレスポンスはゆったりとさせたまま、大きく切っていった時にはよく曲がるようにするとか、そういった味付けを加えることができるのだ。
◆車高を変更したらアライメントは必須項目!
車高を下げたりしているのなら、なおのこと重要。車高を変えるとアライメントは変わってしまう。サスペンションはその設計によって車高を変えると意図的にアライメントが変化するようになっている。そして、その特性はサスペンションジオメトリーの設計によって変わり、アライメント変化の大きなクルマと小さなクルマがあるのだ。
例えば、車高を下げたところでトーを0に調整しても、さらに荷重によって車高が下るとそこから急激にトーアウトになってしまうポイントがあったりする。そうなると静止状態のトーはややインにしておいたほうが走りやすくなったりする。
車高を下げたり上げたりした場合、そのあたりを加味して静止状態のアライメント数値を決める必要がある。それは自動車メーカーの推奨値にしても、そこから大きく変化することがあるので必ずしも正解とは言えない。車種ごとにどんなアライメント変化をするかを把握した上で数値を決める必要があり、そこはプロショップの出番である。とくに車種ごとの変化にはその車種に精通したお店が強いので、そういったお店に相談してもらいたい。さらにそこからサーキット走行に合わせたり、高速道路走行をメインに合わせたりもできる。アライメント調整も立派なチューニングなのだ。