2025年テインは設立から40周年を迎える。今回は東京オートサロン2025の展示で、40周年を記念した創業当時のサスペンション、その後のJGTCで使われたサス、スーパー耐久、PWRCで使われたサスペンションなどを展示。当時の貴重なエピソードを、藤本吉郎氏に伺った。
きっかけは「ないならつくってしまおう!」の一言から、僅か10平米の拠点からスタート
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神奈川県横浜市駒岡町で創業したのが1985年。ラリードライバーの藤本氏とコ・ドライバーの市野 諮氏が二人で設立。そのきっかけは当時どのメーカーのサスでも悪路を走るとすぐにダンパーが抜けてしまった。
「無いなら自分たちで作ろう」と会社を興し、10平米のスペースしかなかった事務所兼工場でオリジナルでサスペンションを作り始めた。「二人で会社を成功させてラリーに出ようって決めました。それが1987年に早速叶いました。香港北京ラリーに出場できたんです」と藤本氏。
その時に学生メカニックを呼んだ。旅費に食費持つから一緒に来ないかって声をかけたら来たのが古林 泰氏だった。当時学生だった古林氏は香港北京ラリーに参加。その後商社に就職し、海外担当を経験。そして、そこから18年後の2005年テインに入社することになる。
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テインはラリー競技を皮切りに、さまざまな競技用ショックを開発。今回の展示品は1989年の初代TYPE Gr.Nでラリー競技で藤本氏&市野氏コンビのクルマに使っていたオリジナルショック。その後、2002年のJGTC SIGMA MR-S、2005年TYPE Gr.N PWRC、2005年TYPE N1 スーパー耐久、2019年TYPE Gr.N F.R.S.SPECなどと続いていく。
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ドライバーとしては藤本氏はテインでの仕事の傍らラリー活動に勤しみ、1994年TTE(トヨタ・チーム・ヨーロッパ)で日本人初のワークスドライバーになる。1995年サファリラリーで優勝。その時のマシンはトヨタ・セリカGT-FOUR。いまだかつてサファリラリーを制した日本人は藤本氏ただひとり。藤本氏のサファリラリーのサポートカードライバーは、後のWRC年間王者マーカス・グロンホルムだったという。
2001年にはTEIN USAを設立、テインは当時から積極的に海外展開をしていた。2005年には商社から古林氏が加わることになり、さらに海外進出のスピードは加速。後に2013年中国工場を設立することになる。加えて2014年には横浜市戸塚区に本社工場を新設した。
現在では中国工場をマザー工場として部材やロッドの生産などを行い、その部材を使って戸塚工場で組み立てやOHなどを行っている。売上は日本国内はもちろん、中国国内での消費も多く、ほかにもアジアや北米などで幅広く販売されている。
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「われわれテインは大手純正サスペンションメーカーのような体制で生産はできませんが、少量生産で幅広いニーズに応えることができます。そして、その目標のひとつとしてきたのがスバル・レガシィにビルシュタインサスが付いたグレードがあったように、自動車メーカーへの純正採用です」
「その想いが、昨年鄭州日産・パラディンでひとつ叶いました。今後もそういったテインをつけるという、コラボレーションを模索していきたいと思っています。そういった声が掛かるようにこれからもっと技術力、商品力を高めていきたいと思います」と藤本氏。
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創業からの40年を振り返ってもらうとあっという間だったという藤本氏。「いろいろ大変だったこともありますが、40年は速かったですね。でも、次はさらにアジアに進出して北米を見据えた生産拠点を作りたい思いがあります」と思いを語る。テインの進化は止まる気配がない。
本格オフローダーの走りを足元で支える「4×4 GRAVEL2」が国内へ正式導入
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テイン注目のニューモデルは「4×4 GRAVEL2」。こちらは既に海外では販売されていた本格オフロード向け車高調。もともと販売していた4×4 GRAVEL1は複筒式構造を採用。しかし、本格的なオフロード走行に対応するには、大径ピストンや長いストローク量が必要であることから4×4 GRAVEL2では単筒式構造に変更。
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さらに別タンク式とすることで、ストローク長の長さとオイル容量の多さ、ガス室の大きさを確保し、長いストロークと安定した減衰力性能を実現した。
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また、ハイドロリバウンドストッパーを採用。既存のストリート向け車高調ではハイドロバンプストッパーを採用。こちらは大きくストロークしてバンプラバーに当たる領域まで来たときに油圧によってストロークを規制。バンプラバーに底突きした「ドカン」というショックなく、じわっとストロークを規制できる機構。ハイドロリバウンドストッパーはその逆で、オフロードでサスペンションが伸びきる際に急に伸びきらず、最後に油圧を使ってじわっと伸びることで車体の姿勢を安定化させ、乗り心地を向上させる。どちらもラリーから生まれた技術。もともと競技志向のテインならではの技術だ。
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この4×4 GRAVEL2はトヨタ「ランドクルーザー」(200、300系)や、中国で販売されている鄭州日産(ていしゅうにっさん)のパラディン用などが販売。2024年にはこの鄭州日産のパラディン限定車に標準採用されたことが話題になった。鄭州日産は日産自動車と中国企業の東風汽車の合弁会社であり、そのクオリティーコントロールのレベルは高い。様々な試験や耐久性テストなどをパスし、標準採用となった経緯がある。その実績ある4×4 GRAVEL2の日本国内での販売も始まった。
現在のところラインナップはランクル200/300とパラディンになるが、今後SUV&RVを中心に開発中。本格的にラインナップが増えてくる予定。
サーキットスペックなみのスペックに求めたのは乗り心地?! 「FS2」で乗り心地は魔法の絨毯だ
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さらに注目モデルのFS2。その特徴はフリクションロスの少ない複筒式構造を採用したモデルで、これはRX1などと同じだが、そこに減衰力伸縮別調整の2WAY機構が備わり、さらにオイル容量を増やして性能をグレードアップする別タンク付き構造になっているという点。
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これまで複筒式構造というとどちらかというと、リーズナブルなモデルに多かった。ピストン径が小さいなどの単筒式に譲る部分もあったが、乗り心地に関する部分ではそういったピストン径やシールの大きさが小さいからこそ、摩擦も少なく有利な部分もある。そこでFS2ではそのしなやかさを武器に減衰力はしっかりと発生させつつ、伸縮別で調整できるように2WAY構造を採用。ストリートメインで乗り心地は極めて快適で、さらにその減衰力を細かく2WAY調整で詰められるように設計。オイル容量の多さとも相まって、ワンランクもツーランクも上の乗り心地を実現した。
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そういったキャラクターとして作られているので、メインステージは街乗りから高速道路、ワインディングなどでも快適性、軽快感を狙って作られている。
ラインアップはGR86/BRZ、テスラMODEL3だが、現在ZC33Sスイフトスポーツ、30系アルファード&ヴェルファイアを開発中。ミニバンやコンパクトスポーツの乗り心地もさらに上の次元に引き上げる予定だという。今後の発売に、いまから発売が待ち遠しい!
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